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【vol.31】こころとからだの健康タイム|ゲスト 清水 國明 さん


 1973年に「あのねのね」としてデビューして以来、常に第一線で活躍し続けている清水國明さん。芸能界きってのアウトドア派としても知られ、自然の力を人の暮らしに活かす様々な活動を行っています。
 今回は清水さんが校長を務める山梨県の「自然樂校」に隣接しているご自宅で、自然を活かした「こころとからだの健康のコツ」についてお話を伺いました。

鳴海周平(以下 鳴海) 清水さんのご自宅、ログハウスは本当に素敵ですね。森の中にすっかりとけ込んでいる感じがします。

清水國明さん(以下 清水) ありがとうございます。周りが森に囲まれているので素っ裸でベランダに出ても何の問題もありません。(笑)お金持ちが湖のほとりの見晴らしのいい所に別荘を建てたりしますが、見晴らしのいい所ではそんな格好出来ないですもんね。見晴らしがいいってことは周りからもバッチリ見られてるわけですから。(笑)
 実はこのログハウス、20日くらいかけてほとんど僕一人で造ったんですよ。
鳴海 芸能界でも「アウトドアの達人」として知られている清水さんですからこれくらいは朝飯前なのでしょうが、それにしてもたったお一人で、しかも20日間で造ってしまうとは…本当に驚きです。
 2005年にオープンした「森と湖の楽園」は、まさに清水さんの想いの集大成ですね。

清水 「あのねのね」としてデビューしてからずっと芸能界で生きてきました。それなりに刺激がある業界なので、今思うと何となく楽しいことをしながら退屈をごまかして毎日を過ごしていたようにも思います。でも心のどこかでいつも「自分が本当にしたいことは何なのか?」ということを探し続けていたんですね。そしてだんだんとはっきりしてきたことが「自然の中で暮らしたい」ということだったんです。田舎で生まれ育ったことも大きく影響しているかもしれません。

自然暮らしは人間の本能

清水 子供の頃は毎日のように渓流に出掛けて行って釣りをしたり、潜って銛(もり)で魚を追い掛け回したりしていました。本物のハンティングゲームですからね、コンピューターゲームよりも断然面白い。川で流されて死んでしまうかもしれないし、草薮でマムシに噛まれるかもしれないというリスクを負って魚と格闘するわけですから。大物を仕留めた時の身体の芯から震えるような感動は今でも忘れられません。

鳴海 もともと人間は狩りをして生活していましたから自然界で食糧を手に入れるというのは本能的なものなんでしょうね。遺伝子の中に組み込まれている本能的なものなのであれば、自然の中で本物の感動を味わえることは当たり前なのかもしれません。近頃は子供達も外で遊ぶ機会がめっきり減ってしまいましたから、清水さんのところで得られる感動はそれだけ大きいのでしょう。

清水 自然暮らしを体験するイベントを長年行っているんですが、近年の子供達の変化には驚かされることがあります。例えば、気温が下がって鳥肌が立つほどなのに寒いと感じない子や、蝉がうるさいほど鳴いているのにまったく気付かない子など、身体の変化を感じられない子が多いんです。これは明らかに自然体験の不足から来ているんですね。自然の中で身体をフルに使う機会がないから、本能的なところが目覚めていないのだと思います。でもここに来て自然の中で様々な体験をするうちに、だんだんと身体が目覚めてくるんですね。自然界や自分の身体からのメッセージを感じる心が目覚めるんです。

鳴海 親子3代で清水さんのところを訪れるご家族も多いようですが、子供さんの自然体験を心配されることはありませんか?

清水 親御さんがハラハラしながら見ている場面にはよく遭遇します。(笑)
 人間が他の動物と違うところは「火をおこしてコントロール出来ること」と「道具を使うことが出来ること」です。自然暮らしの中では先ず、火さえ焚いておけば恐くありません。暖をとるのも調理をするのも、獣を遠ざけるのも火さえあれば大丈夫です。ですから先ずは「火のおこし方」から体験してもらいます。それから自然の中では「ナイフ」という道具の作り方、使い方を覚える事も大切ですね。
「火」も「ナイフ」も、ふだんの生活の中では「危ないもの」の代表ですから、親御さんが心配そうに見ているのもわかるのですが、仮に怪我をしたとしてもその場面で学ぶことの方が大きいと僕は思うんですね。火傷を負ったり切り傷を作ったりしながら生命に危険のあることがだんだんとわかってくる。そういった場面が今は少ないでしょう?
 自然暮らしの体験の中で、ふだんの生活では直面しないこうしたことを少しずつでも体験としてわかってほしいと思っているんです。
 この間いらっしゃったお母さんは森の中で歩いている間中、子供に「木の枝が目に入るから目をつぶって歩きなさい」とかメチャクチャなこと言ってましたよ。(笑)目をつぶったら余計危ないって。(笑)

鳴海 (笑)親の勇気も一緒に試されますね。
 免疫学の権威である安保徹先生は「リラックスし過ぎていることも病気につながる」と仰っています。最近の子供たちにアレルギー性の病気が多いのはそういったことも原因だというんですね。だからそういった子供たちが林間学校など普段とはまったく違った環境に置かれて様々な刺激を受けることで、症状が改善してしまうケースがとても多いそうです。
 私たちの本能には本来「病気にかからない仕組み」があるんだけれども、あまりにも快適な暮らしにばかり慣れてしまうと、こうした本能的な能力が発揮されないのかもしれません。清水さんのところで体験出来る「自然暮らし」は、私たちが本来持っている本能をしっかりと目覚めさせてくれるのでしょう。

清水 私たちの祖先は狩猟をして生きてきたわけですから、本能的には皆さん「アウトドアの達人」なんです。きっかけさえあれば勝手に目覚めてくるんですね。
 人生相談をする人は、本当は心の奥に答えを持っているんですって。だからアドバイスを貰うと「あー、やっぱりそうですか。」って言うんですね。(笑)これも「きっかけ」がほしいわけです。身体も同じだと思うんですよ。きっと治る答えを知っているんだけれども治る「きっかけ」がほしい。自然に触れることによって自然の中で生活していた頃の本能が目覚め、そのことが「きっかけ」となって心身のバランスがとれ体調も良くなるのではないでしょうか。

多毛作人生のススメ

清水 「自然の中で暮らすこと」と、もうひとつ僕が提案したいのは「多毛作人生を歩もう」ということです。自然暮らしで本能的なところが目覚めるのであれば、ワクワクした毎日もまた心身の活性化には欠かせないものだと思うんですね。
 僕は30歳の時にオートバイの免許を取って、40歳の時に「鈴鹿八時間耐久レース」に挑戦しました。世界中からトップライダーが集まる年に1回の大きなレースです。このレースに挑戦するまで14回も骨折しました。ある人からは「オートバイみたいな遊びで死んだらつまらんだろう」って言われましたが「仕事で死んだらもっとつまらんでしょう」って言い返しました。(笑)。マイナス40度のアラスカで家族キャンプをしたこともあります。あまりの寒さに子供が「パパ、どうやって寝たらいいの?」僕は「死なないように寝なさい」と答えました。(笑)他にもいろんなことに挑戦してきました。そしてその挑戦がたいへんなものであるほど、得られる感動も大きいことに気付きました。何か新しいことに挑戦する時は本当にワクワクしますね。心身が活性化してくるのがわかります。
 一生を何か決まりのようなものに縛られて終わってしまうのは、本当にもったいないと思うんです。だからいろんなことに挑戦してみる「多毛作人生を歩もう」という提案をしているんですね。振り返ってみても、やってする後悔よりやらなかった後悔の方が大きいと感じますから。
 現在は「自然樂校」という事業経営に挑戦している真っ只中です。

鳴海 アメリカの大学ではサバーティカルという休みの制度があるらしいですね。先生達にまとまった期間の休暇を与えて、何か新しいことにチャレンジする時間を提供する。そのことで感性の幅を広げたらまた新しい角度から研究を進めていくことが出来る。清水さんが仰るワクワク感にもつながる仕事の仕方かもしれません。日本の会社でもそうした考え方が広がってくると、挑戦してみたいと思う選択肢が広がる可能性がありますね。

清水 「何気なく生きている今日は、昨日死んでしまった誰かが生きたかった明日だ」って言う言葉に出会った時の衝撃は本当に大きかったですね。そう思うともう一瞬たりとも無駄に出来ない。一生懸命楽しんで、幸せを噛み締めて生きなきゃ申し訳ないって思うでしょ?やっぱり人生は「多毛作」でいかなきゃ。(笑)
 僕がオートバイに挑戦していた時、ちょうど子供が生まれたんです。周囲からは「子供が出来たんだから無茶なことはもう止めたら?」って言われたんですが、僕は逆に「子供が出来て自分の遺伝子がつながったのだから、これから無茶なことが出来るじゃない!」って思いましたね。だって自分の遺伝子がつながったんだから。あ、遺伝子的に考えるとあちこちに子供をつくる人の気持ちもわからなくはないな…。(笑)

鳴海 …ちょっと納得してしまいそうになりました。(笑)でも「火をおこしてコントロールすること」や「道具を使うこと」と同じように、そういった本能的な欲求に対する「理性によるコントロール」というのも人間の特性かもしれませんよね。

清水 …思わず納得してしまいそうになりました。(笑)いやいや、本当にそのとおりですね。(笑)

一番大事に思うことは
「自然の摂理に従う」こと

清水 自然暮らしをしながら、興味のあることにいろいろと挑戦をしてきた中で僕が最も大切だなと思うことは「自然の摂理に従う」ということです。何か判断に迷った時なんかは「自然界ではどうなっているんだろう」って考えると気付くことがたくさんあるんですね。「これは自然なことなのか、それとも不自然なことなのか」という判断基準で見ると間違うことがありません。
 自然は読んで字の如く「自ら然るべき」状態のことですから「こうじゃなくちゃいけない」というこだわりは必要ありません。それから何でも必要以上に貯め込んだりしません。肥満の野生動物っていませんもんね。(笑)

鳴海 清水さんがよく仰っている「作れないものは必要ないもの」という考え方も自然の摂理に当てはまりますね。
清水 自宅のログハウスも自分で作りましたし、家具も作りました。食べ物も菜園で作っています。買ってくるのは着る物くらい。本当は葉っぱでもいいんだけど。(笑)本当に必要なものは作れるものばかりだと思うんです。「ないよりはあった方がいいかな」とか「みんなが持っているから」という理由で、本当は必要のないものを必要だと思い込んでいるんじゃないでしょうか。自分が作れないものならきっとそれは要らないもの。作れないならそれを必要としない環境に周りを変えていけばいいんだと思います。
 車や電化製品の普及と進化に伴って生活はどんどん便利になってきました。でもテレビのリモコンを使うようになると歩く機会が減ります。カーナビに頼っていると地図を見ることが出来なくなります。エアコンに頼っていると体調を維持しようとする機能が鈍りますね。文明の進化は身体の退化につながっていることに気付かなければいけません。「立っているよりも座っている方が楽」「起きているよりも寝ている方が楽」こうして楽を突き詰めていくと、行き着く先は「寝たきりがいちばん楽」なんです。
 僕が「なんでわざわざ?」って言われる方を選択するのは「楽」の中に本当の幸せを感じることが出来ないと思うから。「自然の摂理」に照らし合わせるとそういう方向性が見えてきませんか?

鳴海 「自分が作れないものは必要がないもの。そして作れないなら、それを必要としない環境を自分の周りに作り上げること」
「自然暮らし」には、便利な生活の中で私たちが忘れかけている大切なヒントがたくさんあるのですね。
 今日は清水さんの自然暮らしを間近に体験させて頂きながら貴重なお話をたくさん伺う事が出来ました。どうもありがとうございました。

清水 國明・プロフィール

1950年福井生まれ。73年、原田伸郎氏とのフォークソングデュオ「あのねのね」でデビューし、「赤とんぼの唄」が大ヒット。以来、テレビ・ラジオの司会やコメンテータ、著作、新聞・雑誌への執筆など幅広く活躍。芸能界きってのアウトドア派としても知られ、釣り・キャンプ・ログハウス作り、ロッド・ナイフ制作等々、自然体験イベントや環境講演会などの活動も多数。1995年よりアウトドアライフネットワーク「自然暮らしの会」代表。2003年山梨県河口湖に移住、2005年ライフワークとしての「森と湖の楽園」をオープン。NPO活動として子どもキャンプなどを開催する傍ら、河口湖を拠点として、ツリーハウス作りや農業体験など、団塊世代を主ターゲットとした自然のチカラを人の暮らしに活かすビジネスを創出。自然とのふれあいを通じて、都市生活の中で眠ってしまった人間本来の機能を目覚めさせ、心と体の健康を取り戻す活動に尽力する。現在「森と湖の楽園」内のツリーハウスに住み、自ら「清水國明の楽園ブログ」〜自然暮らしレポート〜を発信。

著書に「清水國明の自然遊び日記〜丸太小屋編」(読売新聞社)、「遊YOUキッズアドベンチャー」(ベースボール・マガジン社)、「清水國明の東京リトルガリバー」(東急エージェンシー)、「森のチカラ、生きるチカラ」「直角死」(日東書院)、自然暮らし検定(学習研究社)がある。

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