head_id

【vol.35】こころとからだの健康タイム|ゲスト 荒川 義人 さん


 私どもエヌ・ピュアが、栄養学的な面などから貴重なアドバイスを頂いている天使大学の荒川義人教授。
 北海道における「食育」の推進活動にも熱心に取り組んでいらっしゃる荒川先生に「こころとからだを健康に保つためのコツ」をお伺いしました。

鳴海周平(以下 鳴海) 荒川先生には栄養学的な見解から、いつも貴重なアドバイスをいただきありがとうございます。
 先月は「日本栄養改善学会学術総会」が札幌市のコンベンションセンターで開催され、荒川先生が会長をお勤めになったとお伺いしました。かなり大きな大会だったようですね。

荒川義人先生(以下 荒川) 全国から3、000名以上の方にお越しいただきました。
 自給率200%を誇る日本の食料基地「北海道」でこの大会がおこなわれたことには、大きな意味があると思います。私ども関係者も改めて考えさせられるような気付きがたくさんありました。
 北海道には魅力的な食材がたくさんあります。特に道外の方には「食の大地」とか「美味しいものの宝庫」といったイメージが強いようで、皆さんとても高い関心をもってこの大会に参加されていました。

日本の食料基地「北海道」

荒川 北海道は生産量もさることながら、味も良いというイメージが全国的に定着しています。ただ「どうして北海道産は美味しいのか?」という科学的なデータについては、まだ十分な研究がなされていません。これはじゃが芋やほうれん草などのポピュラーな野菜から、行者ニンニク、ハスカップといった伝統的な食材まで幅広い範囲において言えることだと思います。
 私たち研究者にとって大きな課題のひとつですね。

鳴海 荒川先生が平成9年に発表された「地産地消の発展を目指して」という報告書は、北海道から依頼された政策研究と伺っています。行政としても「食の大地・北海道」の魅力を、全国に向けて積極的にアピールしたいという意向があったのでしょうね。
 北海道の政策研究の他にも様々な活動に取り組んでいらっしゃる荒川先生ですが、専門家として栄養学を研究するようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

荒川 私は小学校からずっと野球少年でした。当時は「巨人・大鵬・卵焼き」の時代ですから(笑)スポーツというと野球か相撲ぐらいしかなかったんですね。背番号はどこを見ても1番(王選手)と3番(長嶋選手)ばかりでした。(笑) 
 野球というスポーツをしている中で「どうしたら身体をベストの状態に保つことができるのか」ということを、中学生の頃から考えるようになりました。
 「身体に影響を及ぼすもの」と考えると、当時は食べ物と薬ぐらいしか思い浮かばなくて、大学で薬学部か農学部に進んで学んでみたいと思ったんです。どちらにしようか迷っていたら、農学部の先輩から「これからは食べ物(農業)の時代だよ。」と言われて、現在に至ります。

鳴海 「巨人・大鵬・卵焼き」は、私も何とかわかります。(笑)
 荒川先生は20年以上北海道大学・野球部の監督を務めていらっしゃったんですよね。栄養学まで網羅した奥の深い指導に、選手の皆さんも大きな影響を受けたことと思います。

食に関する5つの提案

鳴海 健康増進のために国が提唱している「栄養」「運動」「休養」の適切なバランスについて、荒川先生はどのようにお考えでしょうか?

荒川 3項目のどれもが日常生活そのものですよね。どの項目も関連し合っているので、日頃の心がけによってはどこかの不足をどれかで補うことも可能だと思います。私は栄養学の専門家ですので「栄養」についていくつかの提案をしています。
 一つめは「楽しんで食事をしよう」ということです。人間にとっての「食べる」という行為は、ただ単に空腹感を満たすための「エサ」を摂取することではないんですね。「食べる」という行動を楽しむことができるのは、人間に与えられた素晴らしい贈り物ではないかと思います。1日に2、3回は食事をするわけですから「何を食べるか」という食材の選択や「どのように調理して食べるか」という食べ方の選択、「誰と食べるか」「どこで食べるか」という食事環境までを楽しむことができたら、すごく得をした気分になりませんか?

鳴海 一人で食べるよりも大勢でワイワイ言いながら食べた方が美味しいし、消化や吸収に与える影響もまったく違ってくるそうですね。心が身体に及ぼす影響の大きさがわかります。

荒川 二つめは「味覚を育てる」ことです。「味覚」は体内に入ってくる様々な食べ物の良し悪しを判断する大事なセンサーの役目をしていますから、味覚の感性幅が広い方がより豊かな食生活につながります。
 そのためには、離乳食の頃からなるべくいろいろなものを食べさせてあげることが大切です。ただあまり嫌がるものを無理に食べさせようとするとかえってトラウマになってしまうので、あまり深追いはしない方がいいでしょうね。「こんな味も少し体験させておいたらいいかな?」くらいで気軽に味覚の体験幅を広げてあげたらいいと思います。子供の頃美味しくなかったビールが大人になると美味しく感じてしまうように(笑)、何事も適切な時期というのがありますから。
 三つめは「食べ物が及ぼす心身への影響」について知ることです。
 食べ物が心身に影響を与えることはかなり以前から言われてきたことですが、中には少々間違った捉え方をしている場合もあるようです。
例えば非行少年の食歴を調べた結果「砂糖の摂取が多い」とか「添加物の摂取が多い」といったことが非行の原因とまことしやかに言われるのですが、実はそうではないんですね。本当のところは、いろいろなものを食べたり飲んだりする機会がないために結果的に菓子パンばかり食べていたとか、ジュースばかり飲んでいた、という分析報告になってしまうわけです。誰かとコミュニケーションをとりながら食べる(食事を楽しむ)とか、いろいろな味を経験する(味覚を育てる)といった、食に関わる体験が少ない環境だったことこそが原因だと思います。食べ物への関心が希薄にならないように、親御さんは日頃から気を配ってあげることが大切なのではないでしょうか。

鳴海 「食べること」は「生きること」そのものですから、食べ物への関心が希薄になってしまう環境というのは、生きることへの希望や活力にも大きな影響があって当然なのでしょう。
食材の育つ背景を学んだり、実際に育てる体験をしたりといったことも食への関心を高めるきっかけになるかもしれませんね。

荒川 農業体験については、生産者の方々にお願いをして様々な企画をおこなっています。これは四つめの提案である「食についての知識を身につける」ということにも関係してくるのですが、食べ物が育つ背景がわかると愛着がわいてくるんですね。その場で食べたら新鮮で美味しいし、旬というものが体験を通してわかります。旬のものは栄養価も高いですから、まさに一石二鳥です。いろいろな情報が氾濫している時代ですから、自分自身で体験した食の知識というのは正しい情報を判断するうえでとても役に立つと思います。
 「食べる=生きる」ということですから、食について正しい知識を身につけることは、正しい生き方を学ぶことでもあります。
 よくいただく質問を二つご紹介しますね。
 一つは農薬についてです。最近は特に「無農薬じゃないとダメなんですよね?」という質問が多いのですが、農薬は流水で洗うと80%程度は除くことが出来ます。もともと人間に害のない程度で散布しているはずですから、人体に及ぼす影響はほとんどないレベルまでなくなってしまうと考えてもよいでしょう。もちろん農薬を使用せずに育てた方が良いでしょうが、要は程度の問題ですからあまり神経質にならなくても大丈夫ですよ、とお答えしています。
 もう一つは添加物についてです。実はこれも程度の問題なので、よっぽど極端な摂りかたをするのでなければほとんど気にしなくてもよいとは思います。ただウィンナーソーセージなどは、切り込みを入れて茹でるだけでほとんどの添加物が出てしまうので、調理過程を面倒がらないことが大切ですよ、と申し上げています。まあ、そのままポトフやスープにすると結果的には一緒に飲んじゃうんですけどね。(笑)

鳴海 農薬や添加物は調理過程で簡単に減らすことができるんですね。「調理過程を面倒がらない」なかなか耳の痛いお話です。(笑)

荒川 最後の五つめは「日本型食生活のよさを知ろう」ということです。
 私たち日本人は昔から米を主食として、豆や野菜、魚、海藻などを中心とした食事をしてきました。昭和40年代になると、欧米から肉や乳製品が少しずつ入ってくるようになり平均寿命もぐっと伸びを示しましたが、今は逆にこうした欧米型の食品が増えすぎたことが生活習慣病などの原因になっています。肉が高くて滅多に食べられなかった頃、まさに拝んで食べていたような時代(笑)がちょうど良い摂取量だったのではないでしょうか。米を主食として味噌や納豆、漬物などの発酵食品、地場でとれた旬の農産物や海産物に、少しの欧米型食品、というスタイルが長寿の要因になったと考えられています。

「地産地消」から「地産地活」へ

荒川 最近は行政や公共団体が、食に関する知識を学べる場を積極的に作っていこうとする嬉しい動きが広がっています。先ほどお話したように「食について正しい知識を身につけることは、正しい生き方を学ぶことでもある」と思いますので、私もセミナーや講演会、メディアなどを通じてより多くの方々に情報を提供していきたいと考えています。
 北海道は全国的にも注目されている「食の大地」ですから、食に関する情報発信をおこなっていける余地がまだまだあると思います。当初は「地産地消」という観点から提言をしてきましたが、自給率200%の北海道で地消できるのは生産量の半分だけなんですね。残り半分をいかに活用するかが今後の北海道の発展を握るカギではないかと思います。生産したものをそのまま出荷してしまうのではなく、新鮮なうちにその場で付加価値を生む加工ができたら素晴らしいことではないでしょうか。関わる人たちも益々やる気が出てくるでしょう。
 これからの北海道は「地産地消」から「地産地活」に向かっていくべきではないかと思いますね。

鳴海 「地産地活」。北海道の未来が明るくなっていくような、素敵な響きの言葉ですね。
 教えていただいた「食に関する5つの提案」と併せて、心がけていきたいと思います。
 今日はたいへん貴重なお話をどうもありがとうございました。

荒川 義人・プロフィール

1975年北海道大学農学部卒業。
1980年北海道大学大学院農学研究科にて博士課程修了。

北海道栄養短期大学専任講師、北海道文教短期大学教授を経て、2000年より天使大学看護栄養学部教授。
札幌市食育推進会議会長、北海道食育コーディネーター会議座長、北海道フードマイスター認定制度運営委員会副委員長他。
今年9月に札幌市で開催された日本栄養改善学会学術総会でも会長を務めるなど、食に関する正しい知識の普及活動を各地で行なっている。

right_toppage

right_01健康対談ラジオ番組月刊連載

right_02 right_news right_02-2 right_03 right_04 right_06 right_05 right_07 right_07

bnr_npure

bnr_kenkotime