Vol.202 2月 1分間健脳法〜 心穏やかな時間をつくる その3
たったの1分で、誰もが“健脳”になれる!
とても簡単で、よく効く「1分間でできる“脳活”法」を紹介します。
1分間健脳法~ 心穏やかな時間をつくる その3
心がときめくと、脳も活性化します。今年82歳になった医学博士・帯津良一先生の超人的な活動を支える「健脳習慣」をご紹介します。
ゆっくり呼吸でこころを調える
鳴海周平(以下、鳴海) お坊さんに、長寿で健脳な人が多いのは、お経を読む時の呼吸がいいからだ、と聴いたことがあります。吸う息よりも、吐く息が長い呼吸は、氣功でもやはり理想的な呼吸なのでしょうか。
帯津良一先生(以下、帯津) 呼吸は、私たちが生きていくうえで欠かせない生理現象ですから、これを上手にコントロールできたら、もちろん脳にもよいでしょうね。氣功は、吸う息にも、吐く息にも氣持ちを込めますが、吐く息の方へ、少しだけ余計に意識を向けます。時間も、息を吐く時の方が長くなりますね。ゆっくり呼吸をすると、自律神経の副交感神経が優位になります。これは、ストレスが多いと言われる現代において、自律神経のバランスを調えるうえでも大切なことです。さらに、腹式呼吸は内臓のマッサージにもなります。全身の血流がよくなるということは、当然、脳にも血液がたくさん流れていることになるでしょう。
鳴海 「ゆっくり」というのも、大きなポイントなのでしょうね。自己暗示などでも、「動作を大きくすると、氣持ちも大きくなる」と言いますから、動作が心に及ぼす影響は大きいのだと思います。表情が感情をつくる、というのと同じですね。
帯津 そもそも、息は「自らの心」と書きますからね。呼吸をゆっくりすると、自らの心もゆっくりになる。また、呼吸は、熱力学上の廃棄物であるエントロピーを排出するので、体内の秩序を維持するという大切な働きでもあるんです。ちなみに、氣功の三要というのがあって、「調身・調息・調心」と言います。先ず、調身はからだの状態で、肩の力が抜けていて、下半身に力が漲っている状態が理想です。これを「上虚下実」と言います。
鳴海 姿勢は、何をする際にも大切にされますね。アメリカに、姿勢と内分泌系の関係を調べたデータがあって、よい姿勢はストレスホルモンを下げることが確認されています。先ほどの「行動が心をつくる」ということなのでしょう。
帯津 次の調息は、息を調えること。先ほど、吐く息の方へ少し余計に意識を向ける、と言いましたが、これは自然界の摂理でもあって、吐く方が先なんです。「呼吸」も、吸うという字が後にきますね。赤ちゃんは、オギャーと泣いて、つまり息を吐いて生まれてくる。亡くなる時は、息を引き取ると言います。これは本当に、スーッと静かに息を吸って旅立つんです。出入り口も、出る方を先に書くでしょう?調息も、この原理にしたがっているということです。
鳴海 座禅において、究極の呼吸は「あるがごとく、なきがごとく」だと言われています。からだの自然な営みとしての呼吸が、意識しなくても、自然の摂理にかなうようになることが、理想なのでしょうね。
今月のオススメ! 1分間脳活法
〜 吐く息に意識を向けて、ゆっくり呼吸をする 〜
① まずはリラックス。立っていても、座っていても、寝ていても構いません。肩の力を抜いて、楽な姿勢になりましょう。(座っておこなう場合は、仙骨(腰骨)を立てて、両肩が上下しやすい姿勢で。立っておこなう場合は、軽く数回ジャンプすると、ほどよく力みが抜けて自然体になります)
② 呼吸に意識を向けながら、なるべく長く、ゆっくりと息を吐きます。口の形は「あ」でも「う」でも、心地良く感じる形がいいでしょう。
③ 吐き出したら口を閉じ、あとは自然に入ってくるままに任せましょう。静かに、ゆったりと、鼻先から花の香りを嗅ぐように吸います。
最初は3、4回の呼吸を1分くらいかけておこなってみましょう。時間があるときは、心地よさを感じるままにおこなってください。
自らの心と書いて「息(呼吸)」。こころが穏やかでリラックスしているときの、ゆったりとした深い呼吸は、こころとからだを健幸へと導いてくれる脳活法でもあるのです。
参考文献
「死ぬまでボケない 1分間“脳活”法」帯津良一・鳴海周平著(ワニ・プラス)