【vol.63】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第14回 東洋医学の基礎理論13 腎精について
東洋医学の基礎理論⑬
腎精について
(図1)精には、先天の精(両親の生殖から受け継いだもので、胎児の発育に欠かせないもの)と後天の精(生まれてから後、摂取した飲食物から脾の働きによって作られるもの)があり、両者共に腎に蓄えられて、成長や発育、生殖の基礎となります。
両親から受け継いだ先天の精は、徐々に消耗されていくので、後天の精で補充する必要があります。先天の精は、後天の精が加わって始めて、その生理機能が発揮します。また後天の精を作り出すには、先天の精が必要であり、お互いに協力関係があってはじめて機能を発揮します。
腎に蓄えられた精を腎精もしくは精気と云います。
(図2)腎精の作用には、腎陰(腎に蓄えられた津液を指し、各臓腑、組織に栄養〈滋養〉を与え、潤す働き)と腎陽(太陽に当たる心の熱を蓄えた陽気を指し、各臓腑、組織を温めて、パワーを与え、促進する作用があり、生命力を体内に供給する原動力となる)があります。
腎陰は、そのままの形では作用せず、腎陽で温められ、脾に送られて加工され、津液として機能します。
腎精の主な生理機能は、身体の成長や発育、生殖を主り、生命力を生み出します。そのため、腎精が不足すると、発育不良や生殖機能不全( 不妊、インポテンツ)を来します。
前号で紹介した「腎の機能」でも触れましたが、腎は、骨、歯、大脳、末梢神経の機能に関与していますので、腎精が不足すると、骨粗鬆症や、歯が抜けやすくなったり、物忘れが多くなったりと加齢が進みます。
(図3)腎精は、腎が一番元気な20代をピークに自然と減っていくものです。
老化・エイジングついては、青年期を過ぎると、年齢と共に腎精が減少します。すなわち腎精の減少=老化と云うことが出来ます。老化の指標(腎精の盛衰)は、歯や骨、髪の状態で判断できます。
女子は7歳ごとに、男子は8歳ごとに成長と発育の節目があります。
したがってアンチエイジングを志すには、腎精の消耗を抑えて補腎をすることが必要です。「老化」=「腎精の減少」と捉えることが出来ますので、腎精の消耗を抑えて元気に過ごすように、過労や睡眠不足、過度の房事(セックス)をしないように適切な生活習慣をして適度な休息をすることが必要となります。したがってアンチエイジングの決め手は、このように腎精の消耗を防ぎながら、減少した腎陰や腎陽を補い、腎精を蓄える作用と補腎効果がある生薬(図4)を服用することであると思います。
中医学の知恵を日々の暮らしに活かして、腎を健やかに保ちましょう。
プロフィール
医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之
昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会 認定医
日本内視鏡学会 認定医