【vol.63】鳴海周平の全国ぶらり旅|奈良県編
「澄まず、濁らず、出ず、入らず、蛙はわかず、藻は生えず、魚が七分に水三分」
そんな七不思議が伝わる奈良公園の猿沢池。ここから眺める興福寺五重塔の美しさは、記念撮影の定番にもなっています。
今回のぶらり旅は、昨春、奈良でのお話会を主催してくださった奈良在住の桑山展子さんにご一緒いただき、初夏の奈良公園を散策しました。
「私も主人も、出身は大阪なんですが、奈良とのご縁ができてから、この街が大好きになってしまって、すぐに引っ越してきたんです(笑)。主人の仕事は大阪と京都なので、毎日1時間30分かけて通勤していますが…」
そう語る桑山展子さんの溢れる奈良愛からも、この街の魅力が伝わってきます。
1300 年も前に都が置かれ、当時花開いた天平文化が、今もなお文化財や伝統工芸、食文化として、たいせつに伝え続けられている歴史の街。駅からすぐの奈良公園にも、たくさんの名所があります。
「春日大社は今年で創建1250年を迎えました。平城遷都にあたって、常陸国(茨城県)の鹿島から武甕槌命を歓請して、都の守り神としたのが始まりだそうです。朱塗りの回廊と、灯篭も有名ですね」
回廊に揺れる釣灯篭と参道に並ぶ石灯籠、その数なんと3000基!!その時代の権力者から庶民まで、幅広い層から寄進されてきたのだそうです。時代も立場も超えた信仰心が、荘厳な祈りの空間をつくり上げているんですね。
大仏様で有名な東大寺があるのも奈良公園。仏教を敬った聖武天皇の願いにより造立された大仏様は752年に開眼して以来、1300年近く奈良の顔として親しまれています。
「大仏様は、のべ260万人が関わって造られたそうです。これは、当時の人口の約半分。先祖を辿れば、かなり高い確率でなんらかの作業に参加していたと考えられます。奈良を訪ねた時に誰しもが感じる『なぜか懐かしい感覚』は、私たちの先祖から受け継がれているDNAの記憶なのかもしれませんね」