【vol.62】ときめきの富士|春告紅梅 3月 静岡県富士市岩本山公園より
木に咲く春の花の中で
一番最初は梅の花
続いてコブシやレンギョウ、
サンシュユ、桜、菜の花が続き
山の麓は明るい色に彩られる
雪が残り、春霞が引いて
青空の下、富士山が微笑んでいる
まだ肌寒いけれど、
温かさを孕んだ風も吹いて来る
富士山が教えてくれた幸運の法則 その22
緊急事態
深夜十一時四十分。沢山の別荘村がある富士山の一合目までは除雪されていた。目的地はその遥か上にある。当然間道は除雪なし。積雪と氷結の登り道を、誰かが通った車輪の痕跡をなぞって進んで行くのみ。
ここまでロッキー号は快調な走り。やがて目的の広場まであと数百メートルまで来た時に事故は起きた。山側にスリップして身動き取れなくなった四駆が一台乗り捨ててあった。
その車の横を抜けて更に進んで行くと、道の両側の雪は一段と深くなり、ギリギリ通れる車幅は殆ど氷結状態で、道の圧雪の深さは約三十センチ以上だ。
一瞬考えて、今夜は下界に戻る事にした。さっきの車の横を通り、Uターン出来る所までバックで慎重に走った。しかし圧雪アイスバーンの中でハンドルを取られ、私は谷側に流された。車は傾き、右半分が雪の中に埋まった。
車はビクともしない。タイヤは空回りだ。やっちゃった…。人生は今日までか…。さようならみんな…。
人最小限の道具で脱出
だが、不思議と恐怖は無かった。うん、何とかなるな…常備している園芸用の小さなシャベルで、埋まっている前後のタイヤの前を黙々と掘った。気温はマイナス十三度。それでも二十分くらい掘ったらうっすらと汗をかいて来た。やがて底が出て来た。ここからが腕の見せ所。
ちょっと前進、空回りを感じたら間髪を入れずRギヤに入れてバック、空回りを感じたら間髪を入れずにDギヤにして前進。いわゆるスイング走行を5〜6回繰り返したら、雪と道と車輪が「よし今だよ」とピカッと光った。最後はどーっと勢いをつけて、揺れながら道に戻る事が出来た。
無理は禁物
天職のときめきの富士。誰も見た事のないシーンに逢う為に心弾む挑戦は続く。でも少し反省。こんな夜中の山中に誰も助けには来ない。明日の日中も来る保証はない。今夜は何とかなったけれど、準備万端にして、状況判断を的確にして、自然の力をしっかり感じて、あんまり無茶はしないでおこう。
「ロッキー、いい時にまたおいで」
冬の星空、午前零時をまたいで富士山の頂上に位置する天の川。雪が溶けたら又逢いに来よう。
ときめきの富士 写真家 ロッキー田中
現代に蘇った北斎と言われる〔ときめきの富士〕の写真家。生涯に99作、現在までに89作を発表した。幸運を呼ぶ富士山とされて、多くの人々と共に輝いている。全国に260店を展開するホテルの全ロビーに大きな作品が飾られている。検索はロッキー田中またはときめきの富士で。