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【vol.56】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」  第7回 東洋医学の基礎理論⑥


【東洋医学の基礎理論⑥ 血について】

血とは
 東洋医学の血は、西洋医学の血液と全く同じ意味ではなく、より広義の意味を持ちます。
 すなわち血は、次のような働きが加わったものとなります。

(1)養営作用(全身に栄養を行き渡らせる)
(2)滋潤作用(潤いを与える)
(3)精神活動を支える栄養源

 血は、腎、脾、肺の共同作業によって生成され、血の運行には、気のエネルギーが必要とされます。
 これは、血は気に先導されて血管内を巡り、気の統血作用によって血が血管外に漏れ出ないようにするために、気のパワーを必要とするからです。
 一方、血が気に及ぼす作用としては、血は気を運びながら体内を巡り、目的地で気を放出するという「気の運搬役」としての役割を担っています。
 このように血の働きは気の働きと密接に関連しています。
 つまり血と気は、相互に力を供給し合う関係で有り、どちらか一方の巡りが悪くなると、もう一方の機能にも悪い影響を及ぼしますから、血の不調が現れたときは、気の不調の有無もチェックする必要があるのです。
 冒頭で触れたように、血の大きな2つの作用として、全身の組織に酸素や栄養を与える養営作用と、髪、皮膚、筋肉などの各臓器に潤いを与える滋潤作用があります。
 養営作用によって与えられた栄養は、諸臓器が活動するために必要な燃料や材料になります。そのため血は、諸臓器の機能を活性化させる上で重要な存在になっています。
 また、血が提供した燃料を元に諸臓器で熱が生み出されることから、血はその熱を運ぶ役割も担っています。
 滋潤作用は、全身に潤いを供給することで皮膚などをみずみずしく保ち、各臓器を正常に機能させます。そのため「血」が充実していれば顔色も艶やかで皮膚にも潤いがあり気持ちも安定しますが、不足すると貧血やめまい、顔色が暗い、冬場に皮膚の乾燥が強くなるなどの症状が出ます。
 また、視覚、嗅覚、味覚など、五感の感覚を正常に機能させる働きも担っており、特に血と視覚との間には深い関わりがありますので、血虚(血の不足)によって視力障害をもたらす場合があります。

 また大脳機能に対する鎮静作用が有り、精神の興奮を静め、睡眠や記憶、意識を安定化させる作用があります。
 そのため血が欠乏すると、精神活動にも悪影響をもたらし、不眠や不安感、物忘れしやすいなどの症状を生じやすくなります。
「血」は女性の月経とも関係が深く、生理痛・生理不順・PMS(=生理前症候群)・不妊症などの問題を引き起こす原因となったりもします。

 すなわち血は、栄養、滋養、鎮静作用を有していますので、血の異常によって、血の正常な生理活動が損なわれてきます。
 次回には、その血の不調についてお話ししたいと思います。

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

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