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【vol.48】こころとからだの健康タイム|ゲスト 星澤 幸子 さん


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 今号の「こころとからだの健康対談」は、昨秋発刊された『あなたに贈る食の玉手箱』より、料理研究家・星澤幸子先生とエヌ・ピュア代表・鳴海周平の対談「食こそ元氣の玉手箱」を紹介します。

人は、食べたそのものである

星澤幸子先生(以下 星澤
 食の世界に携わっていると、人って「食べたそのもの」だなぁ、としみじみ思うことがあります。
 何かを食べる、という行為は、からだの中に自分とは違うものを摂り込むこと。それが消化、吸収されて自分と同化してしまうということでしょう?
 だから、体調がすぐれていなければ先ずは食べものから見直す、というのが根本的な改善策ではないかと思うんです。

鳴海周平(以下 鳴海)
 私もまったく同感です。私たちは半年から1年ほどですっかり別人になってしまうほど、毎日少しずつ代謝を繰り返しています。すると、現在の体調は過去の食べものや食べ方の積み重ねが現れている、ということになります。
 食の積み重ねがいかにたいせつなのかは、星澤先生がとても良いお手本ですよね。
 ご出演されているテレビ番組の料理コーナーが今年で23年目を迎え、現在もギネス記録を更新中というのは、何よりも説得力があります。

星澤 ありがとうございます。皆さんの支えがあったからこそ、ここまでやって来れたのだと思います。
 放送が始まった当時は、子どもたちもまだ小さくて何かと忙しかったのですが、北海道の食材にこだわって、おやつもすべて手作りしました。だって、自分も家族も元氣でなければ、外へ出て働けないですものね。周囲の方々のおかげで、子どもたちも元氣に育ちましたし、地場のものを旬の時期にいただ
く「身土不二」の素晴らしさを実感することもできました。
 同じような立場で頑張っていらっしゃるお母さんも多いと思いますが子どもが小さい時に一番たいせつにしてほしいのは食の手作りなんです。ここが
踏ん張りどころと思って、手を抜かずに食事を作ってほしいんですね。後で振り返ってみた時に「ああ、あの時に頑張っておいて本当に良かった!!」と思える日が、必ず来ますから。

鳴海 子どもの頃の「食」の記憶は、大人になってからも大きく影響しますからその子が家庭を持った時にそのまま引き継がれる可能性が高いと思います。
 現在の食卓が、孫子の代まで影響すると考えたら、責任重大ですよね。

星澤 私がこころがけてきたのは、日本の伝統的な食事です。
 ご飯と味噌汁、漬け物の他に何か1品。基本的にはこれで十分。
 米(ご飯)と豆を発酵させたもの(味噌)という組み合わせは、世界に誇るべき文化だと思います。
「身体」の「礎」だから「身礎(味噌)」なんだ、という説もあるくらいですから。
 それと、せっかくの食事なのだから楽しくいただくということ。
 昔は、おしゃべり厳禁という時代もあったみたいだけど、みんなでワイワイ言いながら食べた方が美味しく感じますよね。
 私は、毎朝体重計に乗るのですが誰かとお話しながら楽しく食事をした翌朝は、ほとんど増えていないんです。でも、独りで静か~に食べた日の翌朝
は、確実にその分上乗せになってる(笑)。
 楽しく食べると、消化吸収や代謝も良くなるのでしょうね。

鳴海 こころがからだに及ぼす影響はかなり大きいと思います。
「何を食べるか」に加えて「誰と、どんな雰囲気で食べるか」ということにも氣を配りたいですね。

食べものとこころとからだの関係

鳴海 食べものがこころに及ぼす影響についても、さまざまな研究データがあります。
 アメリカでは、高校生を対象にした研究結果で、週に5本以上炭酸飲料を飲む生徒はまったく飲まない生徒に比べて銃器類の所持率や暴力的である割
合の多いことが判明していますし、イギリスの栄養学者の研究では、血糖値の問題を抱える人にうつや統合失調症が多いというデータもあります。
 血糖値の急激な変化が、こころを不安定にする要因であることがわかってきたんです。

星澤 食べものがこころに与える影響は計り知れませんね。
 日本に来た外国人が、味噌汁のおかげでホームシックにかからずに済んだという話もよく聴きます。味噌は外国人にも効果があるのね(笑)。

鳴海 料理研究家の辰巳芳子先生が『食といのち』という著書の中で、もう何も食べられない患者さんが「鮒寿司が食べたい」というので一切れ食べさせたら、毎日召し上がるようになって、とうとう元氣に退院してしまった、という実話を紹介しています。
 これは、鮒寿司の栄養価が良かったというよりも、「美味しい!」という感動で命のエネルギーが高まったと考えた方が自然ですよね。
 また、オレンジジュースを飲むとじんましんが出る、という多重人格の人が別の人格に入れ替わった時にじんましんが消えてしまう、ということが起こ
るそうです。これは、同じからだでもこころ(人格)によって飲食したものの影響が変化するということ。
「食べものとこころとからだは、決して一方通行の関係ではない」ということでしょう。

星澤 興味深いお話ですね。すべて密接に関係し合っていることがよくわかります。
 食べもので心身を調えることができるように、こころの持ち方によっても食べものの影響が調えられる。人間って本当に素晴らしい可能性を持っていま
すね。
 お氣に入りのテーブルグッズを使ったりきれいなお花を飾ったりすることでもこころは調います。食卓にひと工夫加えることも、食事を楽しくする秘訣
ですね。

先人たちの智恵に学ぶ

星澤 食事の前の「いただきます」にもこころを調える効果があると思います。
 ふだん何氣なく使っているかもしれませんが、この言葉には、料理を作ってくれた人、食材を生産してくれた人自然の恵みに対する感謝の氣持ちが
込められています。
 言葉には力がありますから、私たちが「いただきます」と言うたびに、先人たちがこのひと言に込めた想いを実感することができるように思うんです。

鳴海 日本仏教では、食事の前に「五観の偈(げ)」という祈りの言葉を唱えるそうです。
・この食事ができあがるまでに関わった人たちと自然の恵みに感謝。
・自分はこの食事をいただく資格があるのか。それだけ人の役に立っているのか。
・食材を好き嫌いするような、愚かな思いを持ってはいないだろうか。
・この食事のおかげで、我が心身は健康を保つことができる。ありがたい。
・この食事をいただく目的は、自らの天命をまっとうするために他ならない。
 
 という意味の、5つの言葉です。(宗派によって解釈の異なる場合があります)
「いただきます」というひと言には、こうした想いがすべて詰まっているのでしょうね。

星澤 たったの6文字にそれだけの意味が含まれている。とても奥の深い言葉ですね。
 先人たちの智恵は「身土不二」という言葉にも凝縮されています。
 からだと土地は一体だから、その土地で採れた食べものがもっともなじむようにできている。その土地の伝統食こそが、健康・長寿の秘訣であることを
訓えてくれています。
 地場の旬のものを口に入れた時に感じる、何ともいえない安心感は、こころとからだが喜んでいる証拠ですよね。

鳴海 先生も私も、北海道生まれの北海道育ちですから、だいたい好みのものが似ていますよね。食事をご一緒させていただいても、阿吽の呼吸で通じちゃう(笑)。

星澤 この間の「山菜の煮浸し」も美味しかったですね。北海道米の日本酒も。……あら、なんだかお腹が空いてきちゃったわ(笑)。

鳴海 北海道の食べものは、世界的にも人気が高いですよね。全国でおこなわれる物産展は、どこに行ってもダントツナンバー1だそうです。

星澤 なんといっても、自給率200%を誇る日本の食料基地ですからね。
 私も、道外へ出かけるたびに北海道の素晴らしさを実感しています。
 交通手段が発達して、他所の食べものが簡単に入手できるようになりましたが、やはり望ましいのは自分が住んでいる土地で採れた旬の食べもの。他
所の名物をいただくのは、物産展の頻度くらいがちょうどいいですね(笑)。

鳴海 イギリス発祥の「フードマイレージ」は、なるべく近くで採れたものを消費することが環境にもやさしい、という考え方です。日本でいう「地産地消」ですね。
 江戸時代は今のように流通が発達していませんでしたから、住んでいる周囲5~10kmの範囲で採れるものばかりを食べていたと思います。それでも栄養素が足りないことが原因で風土病が発生したという文献はほとんど見当たりません。これは、栄養的にもまったく問題がなかったということでしょう。むしろ、本来地場で消費するものを加工して流通にのせてしまう弊害の方が大きいのではないでしょうか。

星澤 おっしゃるとおりだと思います。
 せっかく先人たちが遺してくれた尊い訓えを活かさない手はありません。
 日本の自給率は現在40%をきっていますから、先ずは自給率をアップさせる工夫を地域ごとに考える。国は、そうした体制をバックアップすることが
たいせつだし、消費者も地産地消をこころがけることで、少しずつでも理想の食に近づけていく必要があると思います。

食は農に学べ、農は自然に学べ

星澤 食を突き詰めると「農」に行き着きます。ここをいかに立て直していくかということが、私たちの健康やこれからの地球にとって、とてもたいせつです。
 例えば、昭和30年代後半から増え出したという農薬や化学肥料の影響は、その頃に生まれた人たちからアトピーの発祥などが増えたことにも関係していると思われます。
 農と健康、環境はすべてつながっているということでしょう。

鳴海 公立菊池養生園の竹熊宜孝名誉園長は「医は食に、食は農に、農は自然に学べ」とおっしゃっています。健康とは「食」であり、その食べものを採取すること、そしてその大本である自然に学び、感謝することが大切なんだということですね。
「奇跡のりんご」で知られる自然農法家の木村秋則さんは、大地(土)の力をとてもたいせつにしていますし、同じく自然農法家の赤峰勝人さんも「草に
大地を耕してもらう」という言い方をしています。細菌も虫も草も、作物の生育を妨げるものではない。すべて自然の恵みだから「神菌・神虫・神草」と
呼んでいるそうです。
 人は大地にある108の元素のうち92個をいただいて生まれてきているそうですから、自然そのままの大地に育まれた作物をいただくことで、こころと
からだが健康に保たれるのは、本来あたりまえのことなんですよね。

星澤 無農薬・無化学肥料で育った野菜の切り口をあてると、アトピーの痒みが治まってしまうという話を聴いたことがあります。自然の恵みを存分にいただいた作物には、そうした力があるのでしょう。
 農薬や化学肥料を使用していた土地であっても、土は自浄作用によって5年で元に戻るといいます。自然の恵みそのままの作物が、どんどん増えてく
れることを願います。

鳴海 京都府綾部市で自給自足の生活をしている食養研究家の若杉友子さんは、旬の野草をいつも食べているせいか、野草が目覚める日の出前に目が覚め、日が暮れて野草が休息する時間になると眠くなるそうです。自然の恵みを常にからだに摂り込んでいると自然界のリズムと同調できるのでしょうね。
 現在76歳ですが、白髪もなく老眼にもなっていないと言いますから、自然の摂理に適った生活がいかにたいせつなのかがわかります。

星澤 自ら体現していらっしゃるのが素晴らしいですね。

食養生とは自然に還ること

星澤 現在、F1種という1代限りの野菜が流通していますが、自然の摂理からするとあまり望ましいことではありません。種をつなぐことができないというのはどう考えても不自然ですものね。

鳴海 自然の摂理に反していることはさまざまな形で還ってきます。特に「食」は、いのちと直接つながっていますから、細心の注意を払う必要があるでしょう。
 加工食品の割合が50%を超えると免疫系が何らかの反応(アレルギーなど)を示すことからも、自然と離れることが、心身にとっていかに大きなスト
レスになるのかがわかります。
 養老孟司さんが「いじめられた人の日記には、花鳥風月がひとつも出てこない」というようなことをおっしゃっていました。花鳥風月、つまり自然と共にある生活が、こころとからだを癒し、生きる活力を与えてくれるのだと思います。

星澤 自然の分身と書いて「自分」ですものね。
 私も「仕事と家庭を両立しなければ!」と力んでいた頃は、かなりのストレスを溜め込んでいました。そんな時山の中へ車でひとっ走りして、窓を全開
にし、深呼吸をするんです。そのまましばらくたたずんでいると、氣持ちがスーッと楽になっていくんですね。
 そのたびに「自然って本当に素晴らしいな」と感じたものです。
 自然界では、陰と陽が出会うと渦(エネルギー)が生まれるそうです。
 私たちのからだにある頭頂のつむじや指先の指紋が渦状なのも、自然の一部である現れなのかもしれませんね。

鳴海 そう考えると、常に自然の中で暮らしている野生動物は健康生活のお手本ですね。
 太陽や月のリズムに合わせて生活しお腹が空いたら食べる、眠い時に寝る。あぁ、いいですね(笑)。

星澤 体調がすぐれない時は、野生動物のように「食べない、動かない、じっと寝ている」といいのでしょう。あたふたして、薬を飲んだり、病院に行ったりしない(笑)。

鳴海 自然のリズムを感じながら生活をするために、日常的に「農」に関わってみることもいいでしょうね。
 前出の若杉友子さんと同じ京都府綾部市にお住まいの塩見直紀さんは「半農半X」というライフスタイルを提唱しています。
 持続可能な「小さな農」をしながらその人に授かった「天与の才(X)」を活かすという生き方です。「農」に関わることで「食」のたいせつさ、命の尊さを実感しながら、自分の才能が活かせる道を歩む。それは、社会的な問題解決にもつながる新しい文化の創造ではないでしょうか。

星澤 本当に素晴らしい考え方ですね。一人ひとりが何らかの形で「農=食」に関わり、土と触れ合うことで自然の一部であることを実感する。これからの時代に主流となるライフスタイルかもしれません。
「美味しい」という漢字を分解すると「口から美しい未来がある」と読めます。
 人に良いと書く「食」が、口から生まれる未来を美しいものにしていくんですね。

 

星澤 幸子 プロフィール

料理研究家・北海道南富良野町生まれ。
札幌テレビ「どさんこワイド」の「奥様ここでもう一品」に出演して23年、
毎日生出演して北海道の素材にこだわった簡単な料理を紹介。
その数5400品を超える。
料理の内容とキャスターとのやり取りの面白さが幅広い層に人気。
日本テレビNG集では毎回「星澤幸子先生編」として全国に紹介され、
日本テレビ「鉄腕ダッシュ」ではTOKIOの長瀬智也さんとの
共演を果たすなど全国にも活動の幅を広げる。
宇宙食開発も手がけ、2007年6月1日付で小惑星に星澤幸子の名が
「Hoshizawa」として国際天文学連合に登録となる。
料理コーナーへの出演回数は現在もギネス記録を更新中。
2009年11月3日「東久邇宮文化褒賞」受賞。
 

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