Vol.030 10月 養生訓から学ぶ、健康的な食事の仕方
江戸時代から読み継がれている「養生訓」という本には、日頃私たちが活用出来る健康のためのノウハウがたくさん詰まっています。
今回は前回に引き続き「養生訓に学ぶ食」というテーマでお話しします。
臓器の間に隙間をつくる?
「養生訓」には腹八分目という考え方があちらこちらに出てきます。
満腹の状態というのは、気の通り道を圧迫して塞いでしまう、という考え方で、臓器と臓器の間に余裕をつくってあげるために、満腹になるまで食事をしてはいけない、と戒めているわけです。
「草木も水や肥料をやりすぎると枯れてしまう」ということも、同じ意味として書かれています。
私たちの脳には満腹中枢という箇所があって、本来は栄養の摂り過ぎを抑えることが出来るはずなんですね。ところがこの満腹中枢が満腹感を感じるまでには、少しタイムラグ(時間差)があります。そのためにしばしば「うー、苦しい、食べ過ぎたー」となってしまうんですね。
でも実は、食べ過ぎ防止、腹八分目のコツがあるんです。
超・健康のコツ
それは「よく噛む」ことです。
噛むことで満腹中枢そのものが刺激される、ということと、よく噛んでいるうちに時間差が縮まってくるんですね。
そして「よく噛む」ことで、唾液がたくさん分泌されます。この唾液には、優れた毒消し作用や消化作用をもつ酵素が含まれています。
精神的にストレスをかかえている人は、食事の時の噛む回数が極端に少ないことが確認されていますし、長命で頭脳明晰なお年寄りは噛む回数が多いということもいわれています。
ひと口20~30回の「噛む」という行為をちょっと気にとめておくだけで、食生活が大きく変化します。そして「超・健康体」に変身出来るんです!
食事の時はこころ穏やかに
何か腹が立つことがあったり、心配事がある時って、あまりお腹が空きませんよね。実はこうした精神状態の時というのは、唾液から毒素が出る、といわれているんです。この毒素を体内に入れないようにする自然な働きだと理解すると納得出来ますね。
食事の時は、なるべく怒らずに、心配事も忘れて、楽しく食事をするように心がけたいものです。
戦争中はどの国でも胃潰瘍の患者さんが急増するそうですが、これもストレスが唾液や消化器官に影響を与えているからなのでしょう。
食後の過ごし方
「食後の後、長く座ったままでいるのは良くない。とくに横になって眠るのは絶対にいけない。食後には毎度、300歩ほど歩くこと」
これは「養生訓」に載っている食後の過ごし方のアドバイスです。食後の昼寝に関しては一部効用も確認されていますので、必ずしも害になるとは言いきれませんが、食後軽くウォーキングをするととても気分がいいんですね。
歩行と寿命の相関関係を調べたところ、1日の歩行距離が多い人は長命である、という結果が出たそうです。
「よく噛んで、こころ穏やかに食事をする」「食後は軽く散歩をする」ことが、「養生訓」の健康的な食事の仕方といえそうです。