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【vol.36】辻和之先生の健康コーナー|糖尿病について 《その2》


糖尿病について、前号では、インシュリン作用について説明させてもらいましたが、今回は2.糖尿病のタイプ3.2型糖尿病の成因4.インシュリン分泌と血糖値について説明させていただきます。


【2.糖尿病のタイプ】
 糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があります。(図10)1型糖尿病はインシュリンを分泌する膵β細胞の破壊により、インシュリンの合成や分泌の絶対的な欠乏が起こる病気です。1型糖尿病は2型糖尿病に比べて若い人に多くみられ、肥満とは関係なくやせ型の体型が多いようです。発症に関しては自己免疫機序による膵β細胞の破壊が関与していると考えられ、関連要因としてHLAなどの遺伝因子が指摘されています。ただし、遺伝因子に注目すると、家族歴にあるように家系内の発症は2型糖尿病に比べて少なく、1型糖尿病は、環境因子との関連が示唆されており、その一つにウイルス感染があります。古くから流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹、サイトメガロウイルスの感染に続発した1型糖尿病症例が報告されていますが、これらウイルスが直接1型糖尿病を発症させるという証拠はなく、ウイルス感染により膵島に対する抗体が発現し、これが膵β細胞を攻撃すると考えられています。

【3.2型糖尿病の成因】
 2型糖尿病の成因(図11)については、遺伝的に規定された因子として膵β細胞からのインシュリン分泌の障害(図12)と、筋肉や肝臓でのインシュリン作用が発揮されにくくなるインシュリン抵抗性(図12)が考えられます。両者のウエートは個々の患者によってさまざまで、インシュリン分泌障害のウエートが大きい患者もいれば、インシュリン抵抗性のウエートのほうが大きい患者もいます。この状態に過食、肥満、運動不足、ストレスなどの環境因子が加わるとインシュリンの作用不足が顕在化し、高血糖が引き起こされてきます。

●2次性糖尿病/その他に他の疾患によって引き起こされる糖尿病を2次性糖尿病といい、以下の疾患があります。

 アルコール性慢性膵炎、膵臓癌、肝硬変、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、クッシング症候群(副腎皮質ホルモン過剰分泌)、ステロイド糖尿病

【4.インシュリン分泌と血糖値】
 まず健常人(健康な人/ここでは、耐糖能の異常のない人=糖尿病や糖尿病予備軍の耐糖能障害のない人)のインシュリン分泌についてお話ししましょう。図13のように上段に血糖値、下段に血清インシュリン値を示します。健常人におけるインシュリン分泌には、摂食とは無関係に常時分泌される基礎分泌と、摂食後、腸管からブドウ糖が流入するのに応じて速やかに分泌される食後血糖維持に重要なインシュリンの追加分泌があります。特に健常人の追加分泌は、立ち上がりの鋭いインシュリン分泌が起こります。この立ち上がりの鋭いインシュリン分泌を初期分泌といいます。この立ち上がりの鋭い初期分泌が起こるために肝臓でのブドウ糖の取り込みが円滑に行われ、食後の血糖の上昇が抑えられます。(図14)

 ところが、早期の2型糖尿病の場合、初期分泌がなく、追加分泌の立ち上がりの悪い遅延型インシュリン分泌が起こります。インシュリン追加分泌の立ち上がりが悪いため、肝臓でのブドウ糖の取り込みが出来にくくなり、食後高血糖になります。さらに食後高血糖と肝臓が円滑にブドウ糖を取り込むことが出来ないために起こるインシュリン抵抗性のために代償性の高インシュリン血症を来します。(図15)

 糖尿病が進行すると、インシュリンの基礎分泌も低下して空腹時の高血糖を招きます。さらに追加分泌が低下して、食後高血糖が増悪します。(図16)

 次回は5.糖尿病の症状6.糖尿病の診断7.糖尿病の合併症についてお話しします。


プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

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