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【vol.38】辻和之先生の健康コーナー|糖尿病について 《その4》


今回は、糖尿病の合併症についてお話ししましょう。


【糖尿病の合併症】(1)(図1)
 糖尿病は、血管が侵される病気です。細い血管が侵される合併症を細小血管症といい、目の網膜の細い血管や腎臓の細い血管(糸球体)、神経が傷害されます(それぞれ糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症といいます)。糖尿病特有の合併症です。
 細小血管より太い動脈に起こる血管障害を大血管症といいます。脳や心臓の血管といった少し太い血管が動脈硬化を来たし、血管が詰まる脳梗塞や心筋梗塞といった病気を招きます。糖尿病以外の疾患(高血圧、高脂血症、喫煙など)でも生じますが、糖尿病があることによって高頻度に生じます。
*この度は、糖尿病の合併症の内、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症を取り上げ、次回には糖尿病性神経症、大血管症についてお話ししましょう。
《糖尿病性細小血管症》

㈰糖尿病性網膜症(図2)
 糖尿病のコントロールが不良の状態(HbA1c 6.1%)が続くことにより、網膜に新生血管といって、非常に脆い血管が出来ます。その脆い血管は容易に出血を来たしやすく、眼底出血を来たし、終いには網膜剥離を来たし、失明に至ります。糖尿病が引き起こす網膜の血管の合併症を糖尿病性網膜症といいます。糖尿病性網膜症による失明は年間3、000人を超え、新規失明の18%を占めており、原因疾患の第2位になっています。(失明原因の第一位は、緑内障、第3位は、網膜色素変性症、第4位は、黄斑変性症)

㈪糖尿病性腎症
 腎臓における糖尿病の合併症を糖尿病性腎症といいます。腎臓は、血液中の老廃物を尿中に排泄する濾過器の働きをします。(図3)血液の濾過は、糸球体(細かな血管が糸を丸めたような球状の形をしているのでその名前がつきました。)という細い血管の壁が濾過膜として作用し、たんぱく質などの体に必要な成分の大きな粒子は、濾過膜を通らず血液中に残り、尿中に出ることはありません。一方老廃物などの細かな粒子は、濾過膜を通過して尿中に排出されます。
ところが、血糖値が高い状態(HbA1c 6.1%)が長く続いたり、高血圧がもとで糸球体の高血圧が長く続くと、濾過膜が損傷されて、本来体に必要な成分の多くが、濾過膜を通過して尿中に排出されてしまいます。始めは、小さな分子量の蛋白質のアルブミンが尿に出てきます。この段階を早期腎症といいます。この時期では全く無症状なので、糖尿病になったら定期的(3ヶ月に一回)に尿中アルブミンを検査しなければなりません。尿中にアルブミンが検出されるようになると動脈硬化が加速され、心筋梗塞などの心血管疾患になる頻度が増加します。この早期腎症の時期に血糖コントロールと血圧のコントロールをしっかり(HbA1c 6.0%、血圧130/85Hg以下)と行えば、早期腎症を改善することが出来ます。さらに高血糖状態が続くと、大きな分子量の蛋白質が漏れ出てしまいます。この時期の腎症を顕性腎症といいます。分子量の大きな蛋白質は、検尿テープで測定することが可能です。この時期になって初めて浮腫みなどの症状が出現します。さらに進むと腎機能障害が進み、腎不全となり、尿毒症から腎臓が機能しなくなり「糸球体」は最終的には尿を作ることをすら止めてしまいます。そうなると、人工透析治療によって、血液中にたまった、尿を抜く治療が必要となってくるのです。

 今まで透析原因の第一位だった糸球体腎炎を追い抜き、2000年頃より糖尿病性腎症が一位を占めるようになってきました。(図4)


プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

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