【vol.41】辻和之先生の健康コーナー｜糖尿病について〜その7

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【vol.41】辻和之先生の健康コーナー｜糖尿病について〜その7

前回までは、糖尿病の合併症について触れてきましたが、今回から糖尿病の治療について説明しましょう。

　糖尿病治療には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。それぞれ共に重要な治療ですが、食事療法を疎かにしていたら、どんなに優れた薬物療法を行っても、またどんなに運動しようとも、糖尿病治療は上手くいきません。

　したがって糖尿病の治療の基本は、食事療法になります。ただし糖尿病が進行していったら、食事療法と運動療法だけで改善できなくなるので、薬物療法が重要になってきます。

　今回は治療の基本となる食事療法について説明します。

糖尿病の99％は、2型糖尿病です。2型糖尿病は、食事した際に分泌されるインスリン分泌（インスリン追加分泌）がゆっくり分泌される体質（遅延型インスリン分泌）の人が、過食、運動不足によって肥満をきたし、内臓脂肪が増えて、インスリン抵抗性（インスリンが効きづらい状態）が増すことにより、膵β細胞（インスリン工場）が疲弊化して発症します。糖尿病が発症したときには、膵β細胞の機能は正常人に比べ、既に50％まで落ちてきています。

　糖尿病の治療は、単に血糖値を下げるばかりではなく、膵β細胞がこれ以上壊れないように、膵β細胞を保護することも重要です。膵β細胞を壊す一因に「糖毒性」が上げられます。これは、高血糖により膵β細胞が壊されたり、インスリンが効きにくくなる（インスリン抵抗性）現象です。膵β細胞が壊されると、インスリン分泌が減少し、さらにインスリン抵抗性により血糖値が上昇し、それが糖毒性を招くといった悪循環を生みます。

したがって糖毒性を招かない食事療法をすることが必要です。間食や過食、砂糖などの単純糖類を含む食品の摂取により糖毒性を招きますので、適切な食事療法により膵β細胞を守るように心掛ける必要があります。

　食事療法の第一歩は、まずカロリー数を設定します。カロリー数を決めるのにBMI《体重（kg）を身長（ｍ）で割り、さらに身長（ｍ）で割った値で、22が標準値になります。25以上が肥満です。》を基に計算します。標準体重を基に、身体の活動度や肥満度に合わせてカロリー数を設定しますが、当院の食事療法は、一般的な食事療法と違い、算出された食事のカロリー数から食品交換表の構成に手を加えます。

　例えば設定されたカロリー数が１２００kcalなら食品交換表では、炭水化物の多い表１は、４８０kcalですが、80kcal少ない４００kcalにし、（因みに表1のご飯80kcalは、50ｇになります）野菜や海草類の表６の量を一日量３００ｇから2倍の６００ｇにします。すなわち一回の食事につき２００ｇの野菜類を食べることになります。

　食べる順番は、先ず野菜を食べ、次に薄味のおかずを半分程度食べてから、最後に主食を食べ始めます。２型糖尿病では、単に血糖値を下げるばかりではなく、内臓脂肪を燃やすことも重要です。内臓脂肪が燃え出すタイミングは、空腹になり出したときです。この時に間食をしてしまっては、脂肪が燃えないどころか脂肪がついてしまいます。間食は、血糖値を上げて糖毒性をもたらし、膵β細胞を壊すことにつながります。したがって間食は、禁物です。空腹感を紛らわす方法には、まずお茶を飲み、それでも解消出来ないときには、セロリやキュウリなどの野菜を食べると良いでしょう。

　糖尿病治療薬の中で、スルホニル尿素（※SU）薬はインスリン分泌を長時間刺激しますので、空腹時に低血糖や食欲増進になることがあり、肥満を助長します。SU薬を服用されている方は、注意が必要です。

　食品交換表の中で、炭水化物を多く含む食品を表１と分類しますが、その中にご飯、パン、麺類の他に芋類、カボチャ、トウモロコシも含まれますので、ジャガイモを食べる際にはそれに見合った量のご飯を減らす必要があります。

※SU薬：アマリール、グリミクロン、オイグルコン、ダオニールなど。