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【vol.17】鳴海周平の全国ぶらり旅|熱海編


 NHK大河ドラマで現在放映中の「義経」でも度々登場するロケ地の熱海市。源頼朝が旗揚げをした鎌倉幕府発祥の地として、古くから特色ある文化圏を形作っています。海と山に囲まれた素晴らしい景観と、豊富な温泉の街、熱海を訪れました。

「ようこそ熱海へいらっしゃいました。今日はゆっくり熱海の魅力をご案内しますよ。」

 そう言って迎えてくれたのは熱海市役所に勤務されている井出章彦さんと奥様の雅子さん、そしてご夫妻の友人で、熱海の船井本社に勤務されている佐々木愛さんの3人でした。
「熱海は見所がたくさんあるんですよ。ちょうど梅の時期ですし、先ずは梅園に行ってみましょうか。」

 日本で最も早く梅が咲くといわれている熱海梅園は、もともとは国内初の温泉療養施設である「 汽(きゅうき)館」の遊歩公園だったそうですが、当時の内務省の衛生局長だった長与専斎が「病気は薬だけではなく、緑の中で適度の運動をして、身も心も治療してこそ効果があがる」という信念で、横浜の豪商などの協力を仰いで造成したことが、現在の梅園のきっかけになったそうです。

「今では1万坪の園内に、樹齢100年を超える梅の古木などが750本以上もあります。1月にはミス梅の女王コンテストが開かれるんですよ。また、ここでは日本一の早咲きの梅と、どこよりも遅い紅葉が同時に楽しむことが出来る年もあります。一年中花が楽しめますよ。」
さすが熱海。まさに「常春(とこはる)」という言葉がふさわしい街です。

「ところで熱海という言葉の由来なんですが、これはもともとこの地が富士山火山帯に属していて、火山活動によって形成されたからなんです。今から1千数百年前にこの火山活動によって凄い勢いで温泉が沸きあがり、海水が熱湯になってしまうほどだったと言います。」

「なるほど。温泉で海が熱くなってしまったから、熱海、なんですか。確かに今でも温泉が多いですよね。」

「はい、今でもかなりの温泉があります。これからご案内するのは日本三大古泉のひとつに数えられるほど古い歴史がある、走湯(そうとう)神社と走り湯(はしりゆ)温泉という所です。ここは平安時代の歌謡にも東国第一の霊場と歌われているんです。」
 なにやら洞窟らしきところからたくさんの湯気が出ています。中に入ってみると奥の方から音を立てて温泉が湧き出ていました。

「江戸時代には、ここの入り口に案内のおばあさんがいて、湯治客にここの温泉に身体を打たせるといいよ、と薦めていたそうなんです。試してみたお客さんが『確かにいいね。これならここに住む人は皆病気をしないでしょう』と言うとおばあさんは『いやいやそうでもないよ。私も年中あちこち痛くて・・・』と答えたと言うんです。お客さん達は『せっかく治った気がしたのに、おばあさんそりゃないよ』と笑いあったという話が伝えられています。何だかのどかな光景ですよね。」

 佐々木さんからそんなのどかな話を聴きながらも、とても霊験あらたかな雰囲気が感じられる温泉でした。

 「走り湯」の上から長い長い石段がありました。この石段は権現坂と呼ばれ、伊豆山神社へと続いているとの事。「ちょっと長い階段だなあ」と思いましたが、4人で話をしながら歩いて行くと、あっという間に伊豆山神社の本殿に到着しました。
「ここは鎌倉幕府を開いた源頼朝と北条政子が忍び会って結ばれた場所でもあるんです。実は私たち夫婦もここが初デートの場所なんですよ。」

 そう言って井出さんは、少し照れたようにお話をしてくれました。
「ここは縁結びの神様としても有名なところで、その腰掛け石には源頼朝と北条政子が座っていたと言われているんです。僕達もよく座りましたけど(笑)。」

 お2人を見ていて「縁結びの神様」というのが、とてもよく納得出来ました。

 次に向かった先は「来宮(きのみや)神社」。ここには樹齢2000年と伝えられる天然記念物の大楠があります。高さ約20メートル、根本の周囲も20メートルという大きさは、只々圧巻です。
「この大楠は昔から不老長生、無病息災の象徴と言われています。周囲をひと廻りすると寿命が1年延びるとか、願い事が叶うとか言われているんですよ。実は私たち夫婦は、伊豆山神社での初デートの後、ここで結婚式を挙げたんです。」

 そう言ってニコニコと笑うご夫婦に、またまた驚かされてしまいました。
縁結びの神様と、無病息災、願い事を叶えてくれる神様。地元の神様のあらたかな霊験がひしひしと感じられました。

「最後に熱海の特産でもある「干物」の老舗にご案内します。釜鶴さんというお店で、地元では知らない人がいないくらいの有名店です。ここの干物はホントに美味しいですよぉ。」

 早速4人で熱海市の銀座町にある「釜鶴」さんにお伺いしました。
「いらっしゃいませ。遠いところよく来てくれました。せっかくですから干物を作っているところをご覧になりますか?」

 そう言って暖かく出迎えてくれたのは「釜鶴」の4代目、二見康一さんです。
康一さんから数えて5代前の先祖平七さんという方は、熱海で網元をしていたそうですが、江戸時代の末期(安政の大地震による不況の時代)まぐろ網権利の事で網元と漁民の間で争いが起こった時に、重税に苦しむ漁民の為に網元であるにもかかわらず、時の代官へ直訴に及び、捕らえられ八丈へ遠島の途中に大島で亡くなったそうです。そうした平七さんの志を継いだ三男の鶴吉さんが干物の販売を始めて、現在の「釜鶴」を創業したとの事でした。

「釜鶴、って面白い名前でしょう。これは昔、先祖の平七が持っていたイワシを煮る釜が浜風を受けてボーっといい音を立てたのを聴いて、これは縁起がいいということでつけられた呼び名「釜鳴屋」からきているそうです。その平七の三男である鶴吉が始めた店だから「釜鶴」というわけですね。私どもの考え方の根底には、先祖平七の無私の心があります。手間がかかっても旬の物だけを、太陽の力をいただいて天日干しにしています。季節によって湿度も気温も違うわけですから、その時期に捕れる厳選した素材だけを使うという事が私たちのこだわりなんです。今は息子の一輝瑠(ひかる)も一緒に干物づくりをしています。親子5代に渡って地道にコツコツとやってきたことが、地元の皆さんに喜んでいただける理由でしょうか。」

 そう言ってお店に並ぶ旬の干物を教えてくれました。春はあじや金目鯛、夏は鮎やトビウオ、秋はえぼだい、かます、冬は甘鯛、イカ、柳かれい、といった素材が並ぶそうです。

 たくさんのお客様の賑やかな笑い声と、小春日和の柔らかな日差しの中、釜鶴さんの干物がいっそう光って見えました。

「熱海はいかがでしたか?私は熱海市役所に勤めて今年で12年目になりますが、年々この街が好きになっていきます。もともとは長野生まれなんですが、今では故郷のように安らいだ気持ちでいられます。この街は気候と同様に、本当に温かい人が多いんですよ。」

 そう言って笑い合う井出さんご夫婦と佐々木さんを見ていると、熱海という街の魅力が改めて感じられてきました。

 温暖で年中花が咲き誇る熱海の人達とのぶらり旅は、心まで温かくなる素敵な出会いの旅となりました。

 今回のぶらり旅では、熱海市役所の井出章彦さんご夫妻、船井本社の佐々木愛さんに多大なるご協力をいただきました。誌面を借りて、心からお礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。

釜鶴ひもの店 TEL0557・81・2172

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