Vol.236 12月 養生訓的「寒い季節のこころがまえ」
養生訓的「寒い季節のこころがまえ」
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
体をあたためすぎない
「(前略)あたためすぎて、陽氣を発して外にもらしてはいけない。のぼせさせてはいけない。衣服をあたためるのも、少しでいい。熱いのはいけない。厚着や火氣で体をあたためすぎてはいけない。(後略)」(巻第六の19)
益軒さんは、冬の過ごし方について「あたためすぎない」ことを繰り返し述べています。
健幸の要でもある自律神経のバランスは、暑すぎたり寒すぎたりが続くことでも影響を受けるので、『養生訓』の「なんでも、ほどほど(中庸)がいい」という考え方は、現代にも通じる養生のコツなんですね。
ポイントは冬至
「冬至には、初めて陽氣が生じる。初めての陽氣であるから大切にしなければならない。この際、静養すべきであって、労働はしないほうがいい」(巻第六の20)
労働はしないほうがいい、のところを読んで、なんだか嬉しくなったのは僕だけではないでしょう(笑)
冬至の日、北半球では正午に太陽が一年でもっとも低い位置になって、昼がもっとも短くなります。この日を境にして昼の時間が長くなっていくんですね。
陰陽学説では、冬至まで陰が極まって、そこから転じて陽が生じ始めると考えます。陰が陽に返るという意味の「一陽来復」ともいう冬至をたいせつにする考え方から、養生のうえでもたいせつな日になったのではないかと思います。
「湿」の害を甘くみない
「風、寒、暑は人の身体を病めること、はげしくて早いが、湿はおそくて深い。そのせいで、風、寒、暑についてはおそれるのに、湿についてはおそれない。ところが、湿は身体の中に深く入り込んでくるので、容易に治らない」(巻第六の9)
益軒さんは、病氣のもとになる「外邪」として、風、寒、暑、湿を「四害」としてあげています。このうち、風、寒、暑に比べると感じにくい「湿」を甘くみてはいけない、と益軒さんは言っているわけです。
冬は乾燥が氣になって、加湿器を使うことも多いかと思いますが、湿度も「ほどほど」くらいがちょうどいいということですね。
参考
『養生訓』 貝原益軒
『貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意』
帯津良一著(朝日新聞出版)