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【vol.32】こころとからだの健康タイム|ゲスト 竹村 健一 さん


 テレビやラジオ、各種情報誌などのマスメディアで、幅広い評論活動を行なっている竹村健一先生。常に世界各地を飛び回り、独自の視点から最新の情報をわかりやすく提供してくれています。
 今回は竹村先生に、常に第一線で活躍し続けるための「健康と若々しさのコツ」についてお伺いしました。

鳴海周平(以下 鳴海) 子供の頃からテレビで拝見していましたので、パイプを銜えている竹村先生を見ると、イメージ通りでとても嬉しくなりますね。

竹村健一先生(以下 竹村) 僕、そんなイメージ?(笑)まあ、インパクトあるとはよく言われるけどね。喋り方とか、髪形とか。(笑)性格上どうしてもストレートな表現になってしまうんですよ。嘘がつけないというかね。これは母の躾が大きく影響していると思います。

「べったん」の想い出

竹村 子供の頃「べったん」というのが流行ったんですよ。東京で言う「めんこ」ですね。僕はこの「べったん」が強くてね。いつも賭けに勝って相手の「べったん」を貰っていました。ところがある日学校から帰ると、庭で母親が僕の大事な「べったん」を全部焼いてるんですよ。僕はびっくりしてね、一生懸命に抗議しました。ところが母親の怒りも相当なもので、どんなに泣き叫んでも取り合ってもくれない。母の怒りの原因は「べったん」をやったことではなく、僕の嘘にあったんです。というのは「健一もべったんをやっているの?」と聞かれた時とっさに「やっていないよ」と嘘をついてしまったんですね。これがバレてしまった。嘘をつくことの代償を、いやというほど思い知らされました。お世辞でも嘘がつけない、という僕の性格はこの時の強烈な体験があるからだと思いますよ。
鳴海 「嘘をついてはいけない」「真実だけを言う人間になるように」という想いは、お子さんたちの名前にも受け継がれているそうですね。

竹村 長男には「眞一」、長女には「眞紀」と名前をつけました。「眞実」の「眞」が入っているでしょ?ところが次男だけは「英二」というんですよ。これはちょうど彼が生まれた年に書いた英会話本がベストセラーになったからなのですが、本人はいささか不満があったらしく「僕だけふざけた名前にして…」とよく不平を言っていました。(笑)
 長く付き合いをしている石原慎太郎都知事も本音でものを言う人ですよ。一緒に大型客船でクルージングしていた時に僕がピアノで伴奏をしながら、彼が弟のヒット曲である「夜霧よ今夜もありがとう」を歌ったんですが、ひと通り歌った後で「伴奏が下手だと歌まで下手になるな。」と言ったんです。(笑)私も嘘がつけないので「歌が下手だと伴奏まで下手になる。」とやり返しました。(笑)彼とはいつもこんな感じで本音をぶつけ合っています。

鳴海 本音をぶつけ合える友人がいるというのは、本当に素敵なことですね。
 竹村先生は大学生の時に「フルブライト奨学制度」でアメリカに留学されたわけですが、アメリカ人は日本人に比べて本音をぶつけ合うというか、ストレートに感情を表現するといったイメージがありますね。

竹村 当時「フルブライト留学生」に選ばれたのは、大学だったら助教授、企業だったら課長クラスといった、アメリカから戻ってすぐに学んだことを役立てられるような地位の人たちばかりでした。そういった中で僕が最年少の現役大学生で選ばれたのは「本音で思ったことをズバズバ言う、日本人には珍しいタイプだったから」という理由からだったそうです。ここでも母の躾が活きていますね。(笑)

「いい加減」のススメ

竹村 アメリカでは、月曜日から金曜日まではしっかり勉強します。でも金曜日の夜から土日にかけては一生懸命遊びます。(笑)最近は「ワークライフバランス」といって、働くことと遊ぶことのバランスが心身の健康に良い影響を与えると言われるようになってきましたが、アメリカではこの頃からそういった考え方があったのです。
鳴海 海外のビジネスマンからは「日本人は仕事の息抜きがあまり上手ではない」と思われているようですね。せっかくの休日にスポーツをするのも「楽しいから」というより「健康のため」という人が多いようです。
 竹村先生は何事も「楽しいかどうか」「面白いかどうか」ということが判断の基準になっている、と著書で拝見しました。

竹村 僕は50歳からテニス、57歳からスキー、58歳からスキューバダイビングを始めました。結構ハードなものばかりなので、ふつうなら逆にやめるような歳ですよね。健康のため、という理由ならやらなかったでしょう。でも僕が始めた理由は「面白そうだったから」。何でもそうですが「面白い」と思ってやった方が人生楽しいですよ。あまり真面目な目的意識は持たない方がいい。(笑)僕はこれまで何かに一生懸命になったという記憶がないんです。努力も好きじゃない。もともと「完璧を目指そう」なんて思っていないですからね。完璧を目指して一生懸命練習して、それで失敗したら腹が立つでしょう。(笑)僕はよく「60点主義」と言っているんです。「一芸に秀でる」という考え方がありますが、僕の場合はまったく逆で、とにかく興味のあることは何でも手を出してみる。楽器だけでもピアノ、バイオリン、マンドリン、アコーディオン、ビルマの竪琴までやってみました。書いた本も英会話、ビジネス、旅行記、ダンス、サボテンの本まで、いろんな分野にわたっています。でも努力は嫌いだから少しやってみて楽しくないとすぐにやめちゃう。(笑)子供の頃から「もう少し我慢してやってみよう」というのが出来ないんです。それでもベストセラーが何冊も出たり、ひっきりなしに講演のお呼びがかかったりする。人生には「いい加減」(良い加減)というのが必要なんじゃないかな。

鳴海 以前知り合いの気功師が、心身の健康のコツとして「こだわらない、とらわれない、しばられない」と言っていました。竹村先生の考え方はまさにそのものですね。
「いい加減力」を高める良い方法はありますか?(笑)

竹村 まず「いい加減になろう」と思うことかな。(笑)
 「座禅」について話していた時、ある名刹の和尚が「座禅をしなくても悟りに達しますよ。でも座禅を組んだ方が悟りに達しやすい」と言ったんです。僕はこういう柔軟な考え方が大好きですね。禅は日常の様々なこだわりから離れるためのひとつの手段ですが、散歩に出たり、身体を動かしたり、旅行に行ったりすることも同様の効果があると思います。こうした意識の切り替えをする機会が増えると、感じる力が育ってくるんですね。感じる力が育つと、ときめきや感動が増えてくる。こうして感性の幅が広くなると「いい加減力」も高まるんじゃないかなあ。
 健康診断の数値もこだわりすぎたら疲れますよ。かえって健康に良くない。(笑)メタボリックシンドロームという言葉が出来て、ウエストや血圧、コレステロールの数値を気にする人が増えていますが、少し太めの「ちょい太(ぶと)」が長生きする、と仰るお医者さんもいますからね。体質も環境も皆違うわけだから、それぞれの人にあった「いい加減」の数値があるはずですよ。何でも気楽にやったらいいんです。(笑)

鳴海 一説によると、気楽な人、のんびりしている人ほどガンにかかりにくい、というデータがあるそうですね。現代人は、会社でも学校でもすぐに成果を求められるせいか、何かと急ぎすぎているのかもしれません。

竹村 世界各地に住む先住民の中には、自然と調和した生活を送っているところが、いまだに多く残っています。太陽や月との関係、天体の運行ペース、季節の移り変わりとそれに伴う動植物の生活リズムなど、周りを観察してみると自然のペースは結構ゆっくりなんですよね。自然の営みに適ったちょうどいいペースに人間も合わせることが出来たら、もっと気楽に生きられるのになぁ、と思いますよ。

スローライフ 
〜自然のペースは「けっこうゆっくり」

竹村 長男の眞一は文化人類学専門の大学教授ですが、環境問題にも随分と関心を持っていて、自然と人間の営みについてもよく話をしてくれるんです。

鳴海 竹村先生のご長男でいらっしゃる眞一さんは、洞爺湖サミットの会場でも展示されて注目を集めた「触れる地球儀」を作られたことでも知られていますね。

竹村 彼は洞爺湖サミットで「変動する地球との共生」ということをテーマに掲げていました。
 洞爺湖はきれいな湖ですが、数十年前までは死の湖と呼ばれていたそうです。近くの硫黄鉱山からの廃液で魚も住めないほどだったらしい。ところが有珠山の噴火があって、すっかりきれいな湖に戻ったというんです。廃液で酸性化していた湖にアルカリ性の火山灰が大量に降ったおかげで、中和して元のきれいな状態に戻ったというわけです。今では1メートルを越えるようなサクラマスが泳いでいるそうですよ。
 台風も被害面ばかりが報道されていますが、最近の研究では台風が数千メートルの海の底まで攪拌してくれるミキサーのような役割もしていて、深いところにある豊富な栄養分を、浅い表面部分に運んでくれているらしいという事がわかってきました。昔から漁師の間では「台風が来ない年は海が痩せて魚が獲れなくなる」と言われてきたそうですから、先人達はこの事を知っていたんでしょうね。
 地球は生きていて常に変動し続けている、そして自然という大きな営みの中で私たちは活かされている。「変動する地球との共生」というテーマにはこうした想いが込められているようです。

鳴海 竹村先生が翻訳した「ガイアの復讐」という本には、地球も私たちのように生きている存在である、という事が書かれていましたね。「人間はこれまで自分のためばかりに地球を利用してきた。このまま地球のことを考えずに自然を征服したつもりで好き勝手な事をしていると、手痛いしっぺ返しを食うことになる。ここ数年続いている異常気象などの大規模な災害は、すべてこうした流れの一環なのだ」という内容がとても印象に残りました。
 東洋医学では「人間は自然の一部である」という考え方がベースになっています。自然は当然地球の一部ですから、地球をないがしろにすることは、結局人類をもないがしろにしているという事になりますね。

竹村 この問題は「文明が進んだから自然が破壊されている」というよりも「文明が未熟だから自然を破壊している」と考えた方がわかりやすいんです。石油や石炭などを掘り、二酸化炭素をたくさん発生させて自然を汚しながらでしか経済成長が出来ない、という時代から、太陽や水、風といった自然の力をもっと有効に活用出来るような時代にシフトしていかなければ、この先の地球と人類の未来はないでしょう。

鳴海 自然エネルギーの活用技術に投資する動きは、世界中で広がっているようですね。私たちは現在「今だけ、自分だけ」という考え方から「未来のことも、他人や環境のことも」という考え方に変わる時代の節目にいるのかもしれません。竹村先生のグローバルな考え方は、これからの地球と人類が歩む道標としてますます重要になってきそうですね。

竹村流「健康のコツ」

鳴海 国内はもとより海外でも多数の講演をこなし、500冊以上の本を書かれている竹村先生ですが、いつも元気で活躍されていらっしゃる健康のコツは何でしょうか?

竹村 あんまり考えたことないけどなあ。(笑)
 脳科学者の茂木健一郎さんと対談した時に「脳はコンピューターと違って生きている臓器なので、筋肉などと同様、使えば使うほど血液も神経細胞も立派になってくる。また、いくつになっても脳の力を引き出すことは可能だ」と言っていました。「もう歳だから。」と言って考えることを怠けてしまうと脳は衰えてしまう、ということです。僕は幸い、本を書いたり講演をしたりしながら、いつもいろいろな人たちと会って刺激を受けている。その度に好奇心がかきたてられて全身の細胞が元気になるように感じるんです。楽しくなかったら、すぐにやめるけどね。(笑)でもこうしていつもいろいろな事に興味を持っていられることが健康のコツなのかもしれないな。
 最近は泡盛をよく飲みますよ。これも健康のためじゃなくて、美味しいから。(笑)「泡盛は身体にいいらしい」と聞いたのは、つい最近のことです。
 まあ、何でも気楽に楽しくやってたら健康にもいいんじゃないですか。(笑)

鳴海 「気楽に、楽しく」というアドバイス。竹村先生のライフスタイルを拝見していると、本当に説得力がありますね。(笑)
 今日は貴重なお話を頂き、どうもありがとうございました。

竹村 健一・プロフィール

1930年大阪生まれ。
53年京都大学文学部英文科卒業後、第1回フルブライト留学生としてエール大学、シラキュース大学に学ぶ。英文毎日記者、山陽特殊鋼調査部長を経て、65年から71年まで、追手門学院大学英文科助教授として教鞭をとる。英文毎日時代から、テレビ・ラジオ出演や執筆、講演などを通じて幅広い評論活動を行なっている。著書は500冊を越え、ベストセラーも多数世に送り出している。

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