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【vol.29】お客様訪問|北海道函館市・寺田 昭吉 さん


 時計修理職人歴50年という寺田昭吉さん。寺田さんのもつ高い技術と、温かい人柄に魅かれたファンは、地元の函館市内にとどまらず、全道各地から時計修理の相談が寄せられてきます。
 STVラジオの人気番組「日高晤郎ショー」をはじめ、数々のマスコミでもたびたび紹介されている寺田昭吉さんに、お話を伺いました。

「何でもすぐに買い替えてしまう文化よりも、代々受け継がれてきたものを手直しして伝えて いく文化の方が、素敵なことだと思いませんか?」

 函館市内で時計店を営む寺田昭吉さんは、昭和32年から時計修理の仕事に就き、昨年で時計修理歴50年を迎えたという大ベテランの職人さんです。メーカーでさえ対応出来ないような、古いアナログ式腕時計の修理もこなしてしまうという高い技術力が評判となり、寺田さんのもとには道内各地から時計修理の相談が持ち込まれます。

「ここまでくるのには、長い下積みの期間があったんですよ。」という寺田さんに、修行当時のお話を伺いました。

「生まれ故郷の長万部町で義務教育を終えてすぐ、16歳の時この仕事に就きました。最初は函館市にある小さな時計店に丁稚に入ったんです。ここで10年奉公をして、みっちりと基礎を教えてもらいました。販売はいっさいなし。朝から晩まで修理専門です。小さい頃から機械いじりが好きだったので、仕事自体をたいへんだと思ったことはありません。親からは『手に職をつけろ。そしてその職は変えるな。』と言われて育ちましたから、一度も転職を考えたことがないんです。同期の多くが、給料の多いところを探して職を転々としていましたが、私にはまったく興味がありませんでした。とにかく『手に職をつけること』『何かのプロになること』だけを考えていました。」

 丁稚奉公では、奉公人を兼・雑用係として扱うことが多かったこの時代。10年間という下積みで既に基礎的な技術を身につけ、さらなる技術の向上に磨きをかけたいと思っていた寺田さんには、悶々とする日々が続いたそうです。

「主人の言うことは絶対ですからね。もちろん雑用でも喜んで引き受けるんですが、もっと技術を磨くために専門的に修理に取り組んでみたかったんです。そんな時、同じ函館市内の時計店で修理専門工を募っているという話を聞き、そこにお世話になることにしました。ここでも10年間、修理の技術だけを専門に勉強させてもらいました。合格率が10%ほどだった『時計修理1級技能士』の資格も取得しました。仕事量はハンパじゃなかったですよ。徹夜に近い作業を連日こなしても追いつかない。ちょうど結婚して子供が生まれた時期でもありましたから、本当に寝ていないんじゃないか、っていうくらい忙しい毎日を過ごしました。」

 こうして20年という期間をかけて学んだ技術を活かし、昭和54年に寺田時計店として独立。以来、多くの人たちの想い出の品々を甦らせてきました。

「安い時計がたくさん出回って、使い捨て気分で時計を買い替えてしまうこの時代に、修理を依頼してくるというのは何らかの想い出が詰まっている場合が多いんです。だからどこに行っても直らなかった、という話を聞くと俄然やる気が湧いてきますね(笑)。そして時計が甦った時の、嬉しそうなお客さんの顔を見ると、何とも言えない幸せな気持ちになれます。この仕事に就いて本当に良かったなあ、と心から思えるひと時ですね。」

「時計と共に甦ってくる想い出があるのなら、想い出そのものを時計に出来ないものか」こうした発想から生まれたというオリジナルの壁掛け時計は、大切な人生の節目や、お気に入りの風景などの写真そのものを文字盤にしてしまうという画期的なもので、マスコミにも度々紹介され、大きな反響を呼びました。この「オリジナルの壁掛け時計」は、今では修理と共に、大切な仕事のひとつとなっています。

「この仕事は『直るか、直らないか』『出来るか、出来ないか』という結果だけなんですね。常に100%が要求されている、と思っています。だから絶対に手を抜けない。私は今まで酒もタバコもやったことがありません。手が震えたりしては絶対に精密機械を扱えないんです。手がかじかむと1日仕事になりませんから、ここ20年は雪かきもしていません。日常生活でも、右手はなるべく使わないようにしています。本当に、相当な神経を使う仕事ではないかと思いますよ。」

 1日中机で精密機械と向き合っている寺田さん。張りつめた気持ちを和らげるために、いくつもの楽しみをもって、上手に健康を保っています。

「趣味はいくつもあるんです。週に1度は写真を撮影しに出かけますし、カラオケは毎日歌います。ナルミさんの『ダッタンそば茶』を飲むときも、ホッと安心して寛げるんです。」

 そして何といっても一番の楽しみは、北海道全域で毎週土曜日に放送されているSTVラジオの人気番組「日高晤郎ショー」。パーソナリティの日高晤郎さんとは20数年のお付き合いになるそうです。

「9時間の生放送を毎週続けていて飽きさせないというのは本当に凄いことですよね。見えないところでかなりの勉強をしている方だな、とつくづく思います。毎週何かを得よう、何かヒントを貰おうと思って放送を聴いているんです。」

 いつまでも学ぶことの大切さを忘れない寺田さんの真摯な姿は、日高晤郎さんと重なるところがあるようにも思いました。

 目に入れても痛くないという3歳になったばかりのお孫さんも、きっとおじいちゃんを良いお手本として逞しく育ってくれることでしょう。

「この仕事はお客さんに喜んでもらえると同時に『もったいない』という大切な精神にも通じていると思います。何でもすぐに買い替えてしまう文化よりも、代々受け継がれてきたものを手直しして伝えていく文化の方が、素敵なことだと思いませんか?可愛い子供や孫たちのためにも、次世代に伝えていくべき大切な精神だと思います。」

 昨今特に重要視されている「もったいない」という言葉の重みを改めて実感させていただくお言葉でした。

 寺田さんの今後ますますのご活躍を、スタッフ一同心よりお祈り申し上げております。

寺田時計店 TEL 0138・53・0145

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