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Vol.204 4月 心穏やかな時間をつくる脳活法 その5


心穏やかな時間をつくる脳活法 その5

心がときめくと、脳も活性化します。今年82歳になった医学博士・帯津良一先生との対談から、その超人的な活動を支える「健脳のヒント」をご紹介します。

穏やかで優しい社会が、健脳社会

帯津良一先生(以下、帯津) 年齢を重ねるごとに、また虚空へ近づいていくというのが、自然の摂理です。ということは、年齢によるからだの変化にも意味がある。だから、アンチエイジングという言葉は、そうした大きな流れに逆らっているような感じがして、あまり好きじゃありません。

鳴海周平(以下、鳴海) ナチュラルエイジングならいいですかね(笑)。体力が衰えてきた、というような話を聴く一方で、若い頃は偏頭痛や腰痛で辛かったのが、歳を重ねるごとにおさまってきた、という話もよく聴きます。

帯津 若い頃は、血管の弾力があるから、氣圧の変化にも敏感なんです。それが、歳とともに弾力がなくなってきて、だんだん鈍感になる(笑)。こうしたことも、自然の摂理にかなった「老いの効用」だと思いますよ。

鳴海 そうした自然の摂理の中で、脳はいつまでも成長を続けることがわかっています。歳を重ねるということは、それだけたくさんの経験もしているわけですから、社会の中で「老いの効用」を活かさないのは、もったいない。江戸時代にあった「老中」や「大老」といった肩書きも、経験豊富な「老い」が、好ましいものと考えられていたからでしょう。
 
帯津 先に生まれる、と書いて「先生」ですからね(笑)。タイやベトナムなどでは、お年寄りが尊敬される文化が、まだまだ残っているようです。そうしたところでは、痴呆の入った人は「神に近い存在」として、いっそう大切にされると言います。

鳴海 臨床医の大井玄先生によると、沖縄の農村などでは、痴呆になっても、周囲が困るような周辺症状をあらわさず、穏やかに暮らしているお年寄りがたくさんいるのだそうです。こうした地域では、お年寄りにはきちんと敬語を使う、など、年長者を敬う文化が残っている、とのことでした。

帯津 人は皆、自分の描いたイメージの中で、自分なりの環境を創って生きています。それは、「なるべく苦痛の少ない状態」を本能的に選んでいる、とも言えると思うんです。
 周りの人たちが敬ってくれるような環境では、自分の存在価値が脅かされることが少ない。だから、徘徊や暴言など、周囲を困らせるような言動というのは、本能的な不安や恐怖が、行動にあらわれたとも解釈できます。
「健脳」を考えるうえでも、年長者を大切にする「敬老思想」がある地域に、学ぶべきことは多いでしょうね。
 江戸時代の儒学者・佐藤一斎さんが『言志四録』の中で、「養生の訣も亦一箇の敬に帰す」と、養生の秘訣を述べていますが、これは、相手を敬うこと、そのものです。相手の内なる生命場に、敬意を抱く。すると、共有する場のエネルギーも上昇しますから、自分の生命場のエネルギーもまた上昇する。とてもよい循環ができるんです。

鳴海 相手に敬意を抱いて接するとき、お互いの脳内では、幸せホルモン「オキシトシン」が分泌されていると思います。穏やかな、優しい接し方をお互いが心がけることで、それらはすべて健脳にもつながってくる。また、それをみている人にもミラーニューロン効果があるわけですから、優しさの循環が、どんどん広がっていきそうです。穏やかで、優しい社会が、健脳社会の姿なのかもしれませんね。

帯津 そうした社会だったら、安心してボケられますね(笑)。でも、本当にそのくらい開き直っていた方がいいんですよ。「認知症になったらどうしようか」という不安や恐怖は、かえって脳の健康によくありません。心とからだは、つながっているのだから、やるだけのことはやって、あとは自然な流れにお任せ、という心の持ち方がいちばんいいんです。

鳴海 「人事を尽くして天命を待つ」ですね。

帯津 そうです。親鸞も「我が計らいにあらず」と言っている、あの心境です。ただ、私たちは、いずれ必ず虚空へ還る身ですから、日々高めてきたいのちのエネルギーが最高潮になった時に、勢いよく旅立ちたい。そのためにも、日頃の養生は、怠りなく続けたいと思うんですよ。一人ひとりが、そうしていのちのエネルギーを高めることによって、場は共有されていますから、地球全体のエネルギーもまた高まっていく。私は、そう思っているんです。

鳴海 自分の内なるエネルギーを高めることが、地球全体のエネルギーを高めることになる。やはり、すべてはつながっている、ということですか。これまで紹介してきた脳活法も、内なるエネルギーを高める参考にしていただけると嬉しいですね。

帯津 よく動いた日はぐっすり眠れるし、よく働いたあとのビールは美味いでしょう。同じように、よく生ききったあとは、氣持ちよく虚空へ還ることができると思うんです。大阿闍梨の藤浪源信さんが「あの世にいくと、自分の好きな人しかいない」と言っていました。あちらへ先に還った大好きな人たちと、また一献傾けることを、今からとても楽しみにしているんですよ(笑)。

 
 

参考文献
「死ぬまでボケない 1分間“脳活”法」帯津良一・鳴海周平著(ワニ・プラス)
 

 

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