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【vol.54】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」  第5回 東洋医学の基礎理論④


【東洋医学の基礎理論④ 気・血・津液】

気血津液理論

 東洋医学には、気・血・津液という3つの要素を分析して、体の仕組みや病気の成り立ちを考える重要な概念があります。
 気は、生命活動の源となる目に見えないエネルギーとして、体内をくまなく巡り、機能しています。気・血・津液の3つの要素とも体内を巡っていますが、気の巡る範囲が最も広く、特定の組織内だけでなく、全身を自由に行き来します。
 血は、西洋医学における血液という意味だけでなく、組織や器官に栄養素や酸素を送る働きや循環作用なども含んだ広い概念を持っています。3つの要素の中では、巡る範囲が最も狭く、血管内を一定方向に巡っています。また血は気を運び、目的地でその気を放出する役割もしています。
 津液は、体液など、体内に存在する血液以外の水分を指します。津液はさらに津と液に分けられ、津は体内を自由に巡るのに対し、液は関節内の滑液や細胞内の液体成分として、特定の組織内を巡ります。
 気・血・津液は単独で機能しているのではなく、お互い関わり合って機能しています。
 例えば気は、血や津液が作られる元となっており、循環の調整役もしています。一方、血の栄養分は、気の材料になりますし、津液は、気や血と共に全身を巡り、気や血の機能を支える媒体としての機能も有しています。
 気・血・津液は、巡っていることで始めて機能しますので、巡りに異常が生じると体にも不調を生じます。巡りの異常には、量が不足している場合と動きそのものの異常があり、例えば、気についてみると、気が不足する『気虚』、気の動き自体が悪い『気滞』があります。

気とは

『気』は、生まれながら備わっている『先天の気』と体の外から取り入れられた『後天の気』に分けられ、『後天の気』は、食べ物から作られる『水穀の気』と、呼吸から取り入れられる『清気』によって作られます。
『先天の気』と『後天の気』によって作られる『気』は、元気(真気)とも呼ばれています。
 気の様々な働きは、宗気、営気、衛気、臓腑の気、経絡の気の5つに分類することができます。
 特に重要な役割を持つのは、宗気、営気、衛気です。
 宗気は、呼吸や心臓の拍動に使われる気で、気・血・津液が体内を巡る原動力になります。したがって宗気は、五臓の肺や心の働きに関わっています。さらに、血や津液をくまなく巡らせる作用や、体の成長や発育を促す作用、日々の生理機能や代謝にも関連する作用も担っています。
 営気は、血管内を流れて全身に栄養を補給します。津液の巡りにも関与して体の表層部から深層部、もしくは上半身から下半身へと巡る(外向きに拡散しようとしている気や津液の巡りを体表部に押しとどめ、巡りの方向を下向き・内向きに巡らせる)働きを先導し、体温調節などの気化作用(体全体を温める《温煦》と冷たく重いものを温めて軽くすること《気化》で、体の上に運べるようにします。気化作用によって軽くすることで、血や津液の運行を容易にします)や、消化吸収などの作用(消化吸収や合成、呼吸によって酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するガス交換などによって、物質を利用可能なものに転化させます)、血を血管外に漏出させないようにする統血作用といった機能を担い、五臓の脾や肺、心の働きとも深い関連があります。
 衛気は、免疫機能、汗腺調節作用を有し、血管内から血管外へと流れて、血管外をくまなく巡る気です。津液の巡りに於いて、深層部から表層部、もしくは下半身から上半身へと巡る(巡っている気や津液などを上向きに導き、過剰な気や津液を生体の外に発散させる)働きを誘導し、外部から侵入する有害物質を排除する防衛作用や、発汗、排尿を調節する作用を担っています。五臓の肝や肺の働きと関わるほかに、腎に蓄えられた熱源である腎陽(腎に蓄えられた熱)にも深く関わっています。

このあと【気の不調】、【血とは】、【血の不調】、【津液とは】、【津液の不調】について続きますが、次回や次々回で解説する予定です。

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

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