Vol.029 09月 養生訓から学ぶ、理想的な食事
江戸時代から読み継がれている「養生訓」という本には、日頃私たちが活用出来る健康のためのノウハウがたくさん詰まっています。
今回と次回は「養生訓に学ぶ食」というテーマでお話しします。
日本人としての主食
皆さんはご飯派ですか?それともパン派でしょうか?もしかしたら麺類派、という方もいるかもしれませんね。
パンや麺類は、小麦が原料になっています。一方、ご飯はお米で出来ています。(当たり前か・・)どちらも同じ穀類なんですが、米というのは良質なタンパク質の割合が他の穀物と比べてかなり多いのです。
気候や気温、四季の移り変わりなどの条件で、稲作という文化を発達させてきた私たち日本人は「米」というたいへん貴重な穀物を主食にすることが出来たのです。
貝原益軒さんは「養生訓」の中で「飯(米飯)の助けを受けて、根源の気は生き生きと活動することが出来る」と言っています。
先祖から代々受け継がれてきた伝統主食の「米」は、私たち日本人にとってかけがえのない宝物なんですね。
五味のバランス
「養生訓」には「五味のバランスを考えて、それぞれ少しずつ食べれば病気にならない」とも書かれています。甘い、辛い、塩辛い、苦い、酸っぱいといった味の感じ方を五味、といいます。
私たちには成人で32本の歯が生えていますが、大きく分けて3種類の歯の形に分かれます。切歯といって草や野菜などを噛むための歯は8本。肉や魚などを噛むための犬歯は4本。残り20本は穀物や豆類を噛んですり潰すための臼歯とよばれる歯です。
歯というのは、私達が意識してこんな比率で生えているわけではありませんよね。人間は自然界の一部である、という東洋医学の考え方でみると、私たちはこうした歯の比率で食べ物を摂取すると良い、ということになります。切歯8:犬歯4:臼歯20。野菜が3で肉類が1、穀類が6といった比率になるかと思います。この比率に、五味のバランスを組み合わせると、理想的な食生活といえますね。
菜食がからだに良い理由
「養生訓」には「野菜は穀物や肉類の不足分を補い、消化もしやすい」という一文があります。
歯のはなしと同じように、私たち人間のからだのつくりをよく観察してみると、もともと人類は菜食であったことが推測出来ます。
例えば爪を見た場合、肉食動物のように獲物を獲るためのカギ爪ではありませんよね。咀嚼する(よく噛む)という行為も草食動物の特徴です。また、消化液の成分の中でアミラーゼというでんぷん分解酵素の活性が高いことも、穀物や芋類を主食にしてきた歴史の証明です。
数千年、数万年という長い歴史の中でつくられてきた私たちのからだの仕組みは、遺伝子レベルで様々なことを記憶しています。
私たちのからだのつくりをもう一度、じっくりと考えてみましょう。
きっと理想的な健康生活のヒントを見つけることが出来るかもしれません。