Vol.043 11月 肥満の2大原因とは?
皆さん、毎日美味しくご飯を食べていますか?
「快食・快眠・快便」は、私たちが健康で快適な生活をおくるための大切な要件です。
今月も前回に引き続き「快食のコツ」をお話したいと思います。
あなたは何回噛んでいる?
突然ですが、食事の時あなたはひと口で何回くらい噛んでいるでしょうか?
よほど意識しない限り、5回から10回くらいで飲み込んでしまうことが多いのではないでしょうか?
時代が進み、文明が進化するにつれて、私たちの噛む回数はどんどん少なくなっています。
時代 噛んだ回数 食事時間
弥生時代・・・3990回・・・51分
平安時代・・・1336回・・・31分
鎌倉時代・・・2654回・・・29分
江戸初期・・・1465回・・・22分
江戸後期・・・1012回・・・15分
昭和前期・・・1420回・・・22分
現 代 ・・・ 620回・・・11分
弥生時代から比べると噛む回数で6分の1、食事時間で5分の1になっているんですね。
ふだんはあまり意識することの少ない「噛む回数」ですが、実は頭の働きとも密接な関係があることが確認されているんです。
朝日大学の船越名誉教授が行ったネズミの実験で、良く噛む必要のある固形食と、あまり噛まなくても良い粉末食を与えて、迷路を使った学習能力を調査したところ、良く噛む必要のある固形食を与えられていたグループのネズミの方が、30%ほど成績が良かった、という結果が出たそうです。
「噛む」というのは、「咀嚼(そしゃく)」という一種のポンプ運動ですから、脳に血液を送る働きが良くなることで、学習能力が高まるのかもしれませんね。
肥満の2大原因
生活習慣病とも関係の深い「肥満」は、今や社会問題にもなりつつあります。特にアメリカでは成人の約60%が肥満の傾向にあり、アメリカ政府もこの問題には頭を悩ませているようです。
神奈川県立保健福祉大学の中村丁次教授が、来院患者に行なった「肥満」に関する調査結果をご覧ください。
食事時間 咀嚼回数
標準体重の男性 13~16分 8.9回
肥満の男性 8~10分 7.7回
標準体重の女性 15~18分 9.4回
肥満の女性 11~13分 8.8回
調査結果から「食べるのが早い人」「良く噛まない人」が、肥満になりやすいことがおわかりいただけると思います。
「良く噛む」ことで食事時間は自然にゆっくりとなり、肥満になりずらい、ということですね。
硬く入り柔らかく出る
「良く噛む」ためには、柔らかいものよりも、ある程度硬めのものを食べることも良いかと思います。良く噛むことで、便通も改善されてくるはずです。
ブリストル大学のケネス・ヒートン教授はこのことを「硬く入り、柔らかく出る。柔らかく入り、硬く出る」と言っています。
つまり良く噛む必要のある硬い物は便通を良くし、あまり噛まないで食べることの出来る柔らかい物は、便秘になりやすくする、ということです。
ところが、ここ十数年はファーストフードがたいへん普及していて、簡単に食事を済ませてしまう傾向が多いですね。(最近便秘の方が増えているのも、こうした傾向に関係があると思います。)ファーストフードは日本語になおすと「早い食べ物」、つまり良く噛まなくても食べられる柔らかいものが多いのです。
一方、日本で昔から食べられているもの(例えば漬物や野菜のお浸し、魚介類など)は、良く噛むことが必要な食べ物ばかりです。
主食をお米にするだけで、副食も良く噛む必要がある食材が並びます。
日本食の良さを改めて認識したいものです。
参考文献 幕内秀夫 著 「体によい食事 ダメな食事」(三笠書房)