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Vol.240 4月 治癒の根源は「内なる自然の力」


治癒の根源は「内なる自然の力」

 このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
 健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。

よい医者は薬をたくさん出さない?

「上医は病を知り、脈を知り、薬を知る。下医はこの三つを知らないので、みだりに薬を投じて、治療をあやまることが多い。中医は病と脈と薬を知ることにおいて、上医にはおよばないが、薬はすべて気をかたよらせるので、みだりに用いるべきでないことを知っている」(巻第七の1)
「 孫思邈いわく、わけもなく薬を服用してはならない。薬によって、かたよってよくしようとすれば、体内の気が乱れて、病が生じる」(巻第七の2)
「病になって、もし名医に出会わないときは、薬を飲まずに、ただ病が癒えるのを静かに待つのがいい。自分の身を愛し過ぎて、医者の良否を選ばないまま、みだりに早く薬を用いてはいけない」(巻第七の3)
「病の災いより、薬の災いの方が多い。薬を用いずに慎重に養生を行えば、薬の害はなくて、病は癒える」(同)

 貝原益軒さんが『養生訓』のなかで一貫して述べているのが「薬は慎重に用いるべし」という考え方。薬の処方の仕方によって、お医者さんも上、中、下にランク分けされるとして「よい医者は薬をたくさん出さない」とも言っています。人間のもつ「自然治癒力」に重きを置いた考え方です。
 自然治癒力という概念は古代ギリシャの医聖ヒポクラテスの頃(紀元前400年前後)から存在していたようで、治癒の根源を「内なる自然の力」とし、それを引き出すことを医術の中心に据えていたことがわかっています。
 『養生訓』が江戸時代に書かれていたことにも相当な歴史を感じますが、紀元前ともなると、その響きだけで何だかありがたみが湧いてきますね。
 

それを知ったうえで薬を上手に活用する

 人間を総合的にみるホリスティック医学の第一人者・帯津良一先生は、こうした考え方をベースにしながら「生活の質をあげるために薬を上手に用いる」ことの有効性を次のように述べています。

「私は痛風持ちです。これを養生だけでコントロールしようとすれば、大好きなビールも酒も、イクラも筋子も明太子も控えなければなりません。私にとってこれでは、生活の質を下げること甚だしい。だから、毎朝、1錠の抗尿酸剤を服用して、ビールも明太子も楽しむことにしています。(中略)つまり、薬を飲んで、生活は乱暴にというライフスタイルなのです。益軒先生には怒られそうですが、心の安定を考えれば、これも養生の術です」

 帯津先生の提案を読んで、何だか嬉しく感じるのは僕だけではないでしょう(笑)。
「こうしなくちゃ」とか「こうでなくては」と思うと、こころがかたくなります。薬についても、自然治癒力を高めること(養生)をたいせつにしながら、体質やライフスタイルに応じて臨機応変に考えたらいいでしょう。
 治癒の根源である「内なる自然の力」を引き出すコツは、養生の秘訣と同じく、こころをやわらかく保つこと。多少のやんちゃは、益軒さんもきっと笑って見守ってくれると思います。

※孫思邈…唐の時代に活躍した医者

 
参考文献
『養生訓』 貝原益軒
『貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意』帯津良一 著(朝日新聞出版)より
 
 

 

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