Vol.233 9月 好きなものを、ほどほどに食べる健幸法
好きなものを、ほどほどに食べる健幸法
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
好きなものは薬に当たる
全8巻におよぶ『養生訓』のうち「飲食」については2巻にわたって書かれています。
益軒さんは「飲むことと食べること(食養生)」を、それだけ重要視していたんですね。
中国の養生法などを参考に、そこへ自らの体験を加えて、具体的なアドバイスとして書かれているわけですが、なかでも「好きなものは脾胃(消化器系)が好むものだから体のおぎないになる」という箇所は、僕がとっても好きなところです。
だって、「好き嫌いしちゃいけません!」じゃなくて「好きなものを食べなさい!」って言ってるんですよ(笑)なんだか嬉しくなっちゃいますよね。
明から清の時代にかけて活躍した劇作家の李笠翁の「好けるものは薬にあつべし(好きなものは薬に当たる)」という言葉が、もともとの出処のようです。益軒さんは「とても理にかなっている」として『養生訓』で紹介しているわけですが、「ただし、好きだからといって食べすぎると、かならず体が傷つき、嫌いなものを少し食べるより悪い。好物を少し食べるなら効果がある」と続けています。
健幸・長寿の方が、みな口を揃えて「健幸の秘訣は、腹八分目(食べ過ぎない)」と言っていることにも通じます。
なにごとも「過ぎたるは、及ばざるが如し」ですね。
食べ過ぎないコツ
でも、好きなものって、ついつい食べ過ぎちゃう氣持ちもよーくわかります!
僕も甘いものが大好きなので、なかなか八分目で抑えられずにいたのですが、いろいろと試してみた結果、効果的な「食べ過ぎないコツ」にたどり着くことができました。
〈 食べ過ぎないコツ 〉
① ゆっくり、よく噛んで、味わって食べる
② ひと口ごとに箸を置く
③ 頭のなかで食レポしながら食べる
(『孤独のグルメ』のように)
じっさいに食べている量と、脳のなかの「満腹中枢」には「時差」があります。だから、ゆっくり食べると、自然にその「時差」がなくなるんですね。「食べ過ぎないコツ」で紹介した項目は、そのための時間稼ぎのようなもの。まあ、『孤独のグルメ』の井之頭五郎さんはちょっと食べ過ぎかもしれませんが…(笑)
どれか1つでもいいので、少しの期間続けてみて「あれ?なんだか、食べ過ぎないほうが調子いいなぁ」という実感が持てるようになると、自然に食べ過ぎることがなくなってきます。
「好きなものを、ほどほどに食べる」
からだが、とっても喜ぶ養生法です。
参考
『養生訓』 貝原益軒
『貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意』
帯津良一著(朝日新聞出版)